D望遠鏡の分類

(4)架台の種類と特徴


 カメラ撮影の際に三脚を使用することがあります。この場合、三脚とカメラの間には雲台が付いています。雲台にも色々ありますが、水平方向と垂直方向へ別々に動かすことが出来るようなものもあれば、全く自由に傾けることが出来るものもあります。カメラの代わりに望遠鏡を取り付けると、固定と動かすという2つの動作が出来るようになります。ただし、天体用として使う鏡筒は、カメラより大きく重たい上に、微妙な動かし方を必要とすることが多く、雲台では難しいことが出て来ます。

 経緯台(経緯儀)
 カメラ用の雲台ではかなりの高級品でないと微動装置が付いていることはほとんどありませんし、一般に望遠鏡の方が重量がありますので、重たい望遠鏡では専用の架台を用意します。スムーズに動くようにした回転軸を付けて動かしやすくすると共に、固定できるようにクランプを付けるなどの構造を持った架台を利用するのが一般的です。また、上下左右の2つの方向へ微妙に動かす必要がありますので、微動装置は必要になります。縦横の方向に動かすので、これを経緯台と呼びます。
 天体用としては、日周運動を追いかけるのに上下左右の2軸を同時に動かさなければならないので、手動ではかなり面倒ですが、コンピューターを使って自動で動かす方法で、量産型の望遠鏡に採用しているメーカーがあります。ただし、時間が長くなると視野が回転するので、映像を撮ろうとする場合は、露出時間に注意する必要があります。

 赤道儀
 天体用の架台としては、対象が日周運動で動いていきますから、日周運動に対応した動きができることが求められる条件となります。日周運動というのは地球の一日一日の回転運動(自転)のことですから、この回転をキャンセルさせる働きが架台に必要となります。簡単に言えば、地球の自転を止めるということになります。この為、地球の回転軸の方向に架台の回転軸を合わせて、微動装置をつかい、望遠鏡を動かすのです。この動作をモーターを使ってやれば、手動で微動装置を回し続けなくても良くなるのです。
 天体の刻々の動きは、北極星を中心として回転しています(正確には、ほんの少し違う場所で、そこに架台の回転軸を合わせます)。これは、地球自身が回転(自転)しているのですが、自分が動いていることは判りませんので、天体が24時間で一周しているように見えるのです。ある場所の緯度と、北極星の高さは同じです。北緯35度であれば、北極星の地平線からの高さは35度です。中緯度地帯では、北極星を中心として回転する軸(極軸)による赤経方向の回転と、それに直角の方向の動きをする赤緯軸による回転をさせることが便利な動きとなります。傾いた経緯台の形になりますので、それをうまく支える機械的構造が考案されています。

 斜めになった赤経方向の回転軸(極軸)を片持ちで支える形式がドイツ式です。このタイプで、鏡筒部分に対するカウンターウエイトを使うのがフラウンホーフェル型です。小型望遠鏡のほとんどがこの形式です。鏡筒部分を支えるのにフォークのような支持構造で支えるかたちがフォーク型です。どちらも極軸が短いので、小型から中型の赤道儀に使う形式となります。
 極軸を鏡筒より長くして両端から支える方式がイギリス式と呼ばれます。こちらはカウンターウエイトを使いますが、極軸の棒を、鏡筒を囲むように四角い枠にしたものがダブル・ヨーク型です。極軸の安定性が必要な大望遠鏡に採用される形式です。
 この架台の軸を中空にして、鏡筒からの光束を導き、観測位置を固定する方式がグーデ式になります。こちらは鏡筒と架台が一体型となっているわけです。

 当然ですが、これらの微妙な動きをモーターとコンピューターを使い追尾するように用意されているものがあります。更に、天体の画像を使って、少しのズレもないように自動追尾、自動導入するgoto望遠鏡も一般的になりました。

 天体の動きに合わせる為に地球の自転軸に平行な極軸と、それに直角となる赤緯軸の2つの軸を使う方式です。極軸を動かすだけで天体の日周運動を追尾できるようになっています。
 種類は幾つかありますが、市販の小型赤道儀はドイツ式フラウンフォーフェル型と呼ばれる、極軸方向の軸に直角に赤緯方向の回転を行う軸を取り付け、片方に鏡筒、反対側にカウンターウエイトをおく形になっています。


ドイツ式フラウンフォーフェル型の一例、タカハシEM-100赤道儀(EM-160セット1983年)