ギリシァ文明はなやかなころ、紀元前300年ごろまでは、人々は地球は平べったく、どこまでいっても果ては無いと考えていました。いや、果てがないというのも少しおかしい、何かあるのではないか、たとえば断崖絶壁みたいものがあって、そこから先へ行こうとすれば奈落の果て転落してしまうというようなことも考えていたのです。
そのギリシャの天文学者にして航海家でもあったピチアスという人がいました。
「わがはいが地球の果てを確かめてやるぞ」というわけで、探検隊を作り大西洋を北へと向かいました。おそらく、ギリシアの植民地であった地中海沿岸のどこかの港から出発し、ジブラルタル海峡を出て、大西洋を北にむかって進んでいったと想像されます。北へ突き進んでいく内に、おそろしく寒くなって、あたりは常に暗くなり、まわりがよく見えなくなって、やがて船はなにかにつきあたり、テコでも動かなくなってしまったそうです。ピテアスは、ここが地球のはてで、親切に壁かなんかつくってあるんだなと考えて、ひっかえしたということです。たぶん、北極圏に入り、海に氷がはって動けなくなってしまったのではないかと思いますが、奈落に落ちるかもしれないという話があったにもかかわらず、探検を遂行したピアチスはなかなかの勇者であったわけです。
ところで、同じ古代ギリシャに、すでに地球は丸いという証拠を見つけていた人がいます。たとえは、アリストテレスです。哲学や自然科学の祖とあおがれる彼は、港から出ていった船が水平線を超えて、船の下からだんだん見えなくなり、最後にはマストの先しか見えなくなることから考えて、地球は丸くできているのだと説明しています。また、月食のさいに、月に映る地球のかげか丸く見えることから、地球は丸いと考えた人もいます。
紀元前230年ごろのギリシアの天文学者で地理学者エラトステネスは、ギリシアの植民地アレキサンドリアの王立博物館の館長として招かれた学者ですが、あるとき、ナイル川上流のシエナ、現在のアスワンの近くに旅行し、ちょうどこの土地が北回帰線の真上にあり、夏至の日の正午に、太陽がちょうど頭の真上にあることに気がつきました。そしてシエナがずっと北方のアレキサンドリアと同一経度上にあることを利用して、アレキサンドリアとシエナから同時に見たときの太陽の高度差が、二都市間の緯度差であることを推定しました。二都市間の距離を旅人達の移動速度から計算し、その結果、地球全周の長さを計算しました。今の長さに換算すると46250キロで、実際の値より、やや大きいのですが、基礎となる地上距離の推定精度からしても、当時としてはおどろくべき精密さといってよいでしょう。エラトステネスは「地理学」という本を残しましたが、その中で、西の方へ向かって航海すれば、インドに到着できると記述しているということです。現在その本が残されてはいないのですが、その記述かその写しを見て世界一周を夢見た男達がいるのは確かです。