マウナチャリ山ケロ丸天文台の歴史 2018年
2015年4月に行った30センチ鏡筒の改造では、筒外焦点位置をカメラで合焦するギリギリまで鏡筒を延ばしたのですが、フィルターホイールを使用してみたところ、筒外焦点距離が足りずに最初9pあった筒外焦点位置を6pに、やや戻していました。この状態でD850を使用すると、周辺減光がかなり目立ったので、この仕様を当初改造位置へと戻す作業を行いました。D800改でも、かなりの周辺減光が生じましたので、こちらからも必要とされました。
再改造になるような大仕事ではなく、当初目的にあるように出荷時設定へ戻せる形での改造を行っていますから、厳密には改造というよりは部品の脱着レベルです。要は鏡筒の延長筒を作り、主鏡セルとの間に入れるというもので、止め位置で延長量が調整出来ます。この位置を部品作成当時に戻すという作業ですので、10分もかかりません。
続いて、4本の鏡筒を載せていましたが、その中で80EDTの出番が無い為、こちらをガイド鏡として残し、同口径アクロマート旧ガイド鏡を降ろすことにしました。
GINJI300と130EDTは変わっていないのですが、GINJI300の作業の為、130EDTを外しました。3本の鏡筒の光軸合わせは、機械がちゃんと出来ていれば特に大変な作業では無いのですが、昼間の内にある程度できると、撮影が楽になります。そこで、雲間から太陽が覗いたので、これを使って一挙に光軸合わせをすることにしました。一般に太陽光を望遠鏡に通すのは、のぞき込む可能性のある人物がいる場合は御法度ですし、方法としてはおすすめ出来ませんが、鍵のかかったドームの中です。しかし、慎重な作業が必要なことは間違いありません。
先ず、時間がかかる場合もありますから、赤道儀を動かして恒星時運転をします。続いて接眼側のキャップ、カバーを取ります。更に対物側のカバーを取ります。主鏡に太陽を導入し、ど真ん中へと導きます。鏡筒の接眼部、太陽光が集中する焦点付近に可燃物が無いことを確認してください。ピシッと導入したら、筒先のフタをつけましょう。この際、ニュートン反射では、光軸が曖昧ですから、延長筒などで接眼部を延ばして真ん中を判断します。通常の屈折機では、太陽の影がありますから、真ん中を合わせるのは楽でしょう。しかし、良く見る為に平らな板で影を受けると作業がはかどります。
続いて、主鏡のファインダー、副鏡、副鏡ファインダーと合わせながらフタをしていきます。自信のある方はフタをしなくても良いかも知れません。終わったところで、収納状態へ戻します。この作業で、結構な所まで合っていますので、厳密な調整は星を見ながらということになります。
メインカメラをD850へ替えましたのでシャッターコントロールソフトに追加が必要になりました。D800はカラーバランス調整フィルターをクリアフィルターに換装しましたので、天体用と言うか、Hα用となっていますので、こちらも使うので、双方に対応した機能を用意する必要が出ました。
天体写真の中でも暗いものは長秒撮影を行います。その際にB:バルブ、T:タイムあるいは双方のシャッター機能が搭載されている必要があります。デジタルカメラでは、30秒程度まで設定があるのもありますが、5分や10分という時間を使うものも少なくありません。フィルム時代のカメラでは、バルブシャッターを使う場合は、ストッパー付きのレリーズを使用して、手作業でシャッターを開始・終了しました。タイムというシャッター機能は、一度目で露出開始、二度目のシャッターで終了というものですから。追加部品が必要ないようですが、手でシャッターを押すと、カメラの状況では、ぶれたり、動いてしまうこともあるので、レリーズ位は必要でした。
デジタルの時代になって、カメラ側に30秒程度までの長秒設定や、外部コマンダーを用意するモノが出て来ました。こうなると便利です。わたくしにとっての最初の一眼デジカメであるD70は、小さなコマンダー、ML-L3で使う事が出来ました。また、受光部の無いカメラに使えるルミコントロールセットML-3というものもありましたが、こちらはバルブが使えない事に購入後気付いたという因縁があります。仕掛けておいて横切った動物を撮るという目的に有効でしたが、天文ドームの中では役に立ちませんでした。
D70の後継に購入したD300で、ML-L3が使えなくなって、シャッターを切るのに苦労していましたが、そこで、社外品に手を出してみました。韓国製でベルボンが輸入代理をして販売している、セキュライン社の赤外線コマンダーでした。バルブしか無いカメラでタイム機能を使える優れ物です。受光部は10ピンターミナルに受光器を取り付けるもので、その後、カメラを乗り継いでも同系列の後継品を使っています。
ただ、単なるコマンダーですから、どうしても時計やタイマーを見て手動でコマンダーを操作するモノです。目の前のタイマーや時計を見ての操作です。有線でも使えると言うことからコマンダーを調べて見ると、本来出力側であるジャックからの信号を使ってコマンドを発光できることが判りました。それで、回路の一部改造を行い(全く簡単な改造で、並んだ端子を2カ所、ショートさせるだけです。勿論カメラへの有線接続はできなくなります)、パソコンのUSB出力からリレーを制御し、全押しを指示するオンオフを有線で送り、コマンダーで赤外線を発光させカメラを動かすことが出来ました(2012年12月)
ここで、面倒だったのが、バルブ機能しか無いカメラにタイム動作をさせることです。セキュライン社のコマンダーでは、カメラに取り付ける受光部にスイッチがあり、バルブ機能を有効にしていました。意外とこれが手間がかかり、操作によっては解除されることもあり、スイッチが反応したのかを確認する必要がありました。
長秒シャッターとしてタイムはD800には無く、D850で追加されました。つまり、セキュライン社がオプションとして搭載した、受光部のスイッチを押してモードを切り替え、バルブしか持たないカメラにタイム動作をさせる機能が要らなくなったのです。しかし、D800を使うにはこの方法が必要です。その為にプログラム上でもシャッターコントロールの信号を余分に出力するように作っています。それが、必要なくなっていると言うことは、2つのカメラを同時使用する場合は、逐一切り替えるか、コマンダーを2台にするかという選択肢となります。まあ、同時に2台で撮影というオプションを切り捨てていれば、切り替えで済む方が、プログラムも操作も簡単です。ついでに、操作状況から設定値を改めて用意しました。
更に高性能な鏡筒に換装する気になっていましたが、「よろしくない」との御神託があり、出資予定金はそのまま保留となっています。で、現行で使うのであれば、少々の手直しが必要となりますので、手を加えることにしました。それほど大きな変更ではありません。同架している鏡筒の内、ガイド鏡となる8センチの短焦点の取り付けを変更するのが、今回の作業です。目的は、操作性の改良と、搭載重量の減量です。また、ガイドシステムの変更も行います。
ガイド鏡は重さ1kちょっとの方向微調整装置に搭載された上に、3点調整型の支持脚に取り付けられています。この方向微調整装置を外しても良いわけです。何故こんな形になっているかと言えば、8センチ短焦点は方向微調整装置の上に直付けされていました。ガイド鏡は、鏡筒バンドで固定されているのでは無く、接眼部から伸びたカメラ三脚向けの脚部が付いていて、そこで固定されていたのです。ところが、その接眼部と脚部の取り付けが少々問題ありで、強くネジを締めたところ、ネジ山が落ちてしまったのです。そこで、鏡筒バンドの形にするか、ファインダーのような3点支持のリングを2本にするかを、市場調査の上で決定しました。つまり、支持リングの方が安かったのです。で、換装したので、こんな形になっていました。今回は、ついでに取り付け位置も少し赤道儀の回転軸に近付けて、負担を軽くしようという手です。
ガイドシステムの変更は、オートガイダーをα−Sgrに戻すことが作業内容となります。この為に配線を変更します。これまで使用していたオートガイダーで、安定性と信頼性について疑問を感じるところがあり、ソフト頼りの形から、少々ハード寄りとなりますが、安定性第一の方向へシフトしたというところです。配線そのものは簡単で、CCDからのオートガイド用のコマンドをモータードライブに入れるのでは無く、制御装置からの出力に変更して、制御ソフトを入れ替えるというだけです。
後は、実天体でのテストと検証ですが、天気が回復したところで行う予定です。
懸案となっていたウォームホイル回りのグリスアップを行いました。
モーターの付いたウォーム部分を外すと、ウォームホイルにアクセスできます。この部分についたグリスは結構高級品ですが、さすがに設置から11年が経っています。ここまで持っていることから、高耐久な高級品を使っていることが判ります。しかし、さすがにやや粘度が増してきています。その結果、モーターの力が足りなくなって高速機動をさせるとクラッチが働いてしまうと考えました。エンコーダーを使った大型機種ではありませんから、ステップ抜けを起こしてしまうと、最初の位置決めからやり直しとなってしまいます。ステッピングモーターを使うのは、エンコーダーが要らないという理由が一番のことですから、利点が逆に欠点となってしまう悪い例です。
拭き取る時のグリスの状態を見ると、それほど劣化している感じはありませんが、粘り気が増しているのは判ります。しかし、そんなギリギリの状態で使用していたはずは無いように思われます。最高速機動のときに常にクラッチ抜けを起こすわけではありませんので、他にも原因があるはずです。そう思いながらグリスを塗っていると、気付いたことがあります。
極軸、つまり赤経方向の回転を受け持つ部分は、中心に軸となる棒が入っています。最近の赤道儀は極軸望遠鏡が使えるように中空のパイプ構造を持っていますが、基本は中心軸です。その外側にウォームホイルが回転できるようになっています。そして、更にその外側、外筒の部分があって、軸、ウォームホイル、外筒の3重構造になっています。クランプは外筒部分に付いていて、外筒とウォームホイルの固定をします。ですからウォームを外してしまうと、中心軸を固定するものが無くなってしまい、自由回転となります。この状態だと、実に軽々と回転します。グリスアップ後、ウォームを付けると、回転が結構渋くなります。この部分、わたくしのところでは、結構な重量の機材を載せるので、少々きつめとなっているのです。そして、このことが原因で、バランスの狂いが判りにくくなっていることが想像できます。つまり、バランスを合わせる為に、回転しないことを目標にして合わせると、バランスが合っていないと言うことが起こるのです。ですから、バランスを合わせようとするときは、力をかけて逆方向と同じ力で動くことを確かめる必要があるということになります。簡単なバネ計りがありますから、これからはそれを使うことにします。
また、今回の古いグリスを拭き取りながら、新しいグリスを塗布するという作業をして見ると、古下着などのウエスを充分に用意し、機械洗浄スプレーを使えば、他のところに余計な負担をかけず、分解も最小限で、グリス交換ができるということが判りました。次回が何時になるかは大分先だと思いながらも心得として記録しておきます。