デジタルカメラ

星座撮影のフィルター効果2(20191024)

 前回、フィルターによる効果をまとめましたが、仕様レンズは準望遠の105mmを使用しました。望遠側ですから効果が出やすく判断しやすいものでしたが、デジタルカメラの世界も日進月歩、特にレンズの高性能化は目を見張るものがあります。前出の105mmはカタログを超える性能を持っています。でも重いんですよね。出かけるのに手持ちで持って出る気にならないというのは、年のせいでもあります。閑話休題。
 ですから、今でも玉石混淆とはいえ、天体写真に使えるレンズが沢山出てきています。20年30年前という古い時代では、天体写真を撮るのにズームレンズなんか、暗いし像はひどいので使えんと言われていました。今や、廉価版のズームレンズの中にも、当時の高級単焦点レンズを超える性能を持つものがあります。

 そして、星座撮影に使うフィルターとして、光条効果は、ほとんど使われていません。あれは、イルミネーション用です。また、広角レンズで、タイムプラスというような動画を撮ることも行われています。そうなると広角側でソフト効果があると見映えが増すこともあります。ぼかしすぎるとレンズが悪いのかなどと、あらぬ疑いもかけられてしまいます。
 ここで、焦点距離40mm付近で、フィルターを使って取り直して見ました。前回は、もう良いかと思って購入を渋っていたSOFTON(B)が格安で手に入りましたので、検証してみます。
  SOFTON(A)    (Kenko)
  SOFTON(B)    (Kenko)
  PRO SOFTON A  (Kenko)
  PRO SOFTON B  (Kenko)
  BlackMist No.1 (Kenko)

注 ケンコーのページにはソフト効果のフィルター紹介の中で、効果の強さを表にして示しています。
  効果弱側
  デュート
  ソフトンA
  センターイメージ・ソフトスクリーン
  プロソフトンA
  ソフトンB
  フォギーA
  ブラックミストNo.1
  プロソフトンB
  ソフトクロス
  フォギーB
  センターイメージ・サンドスクリーン
  効果強側
 一般的な撮影ではこの順で良いのですが、星座撮影となると、全体的にコントラストを下げたり、中心部を残したりするようなフィルターは、あまりお勧め出来ません。フォギーやセンターイメージがこれに当たります。
 また、デュートは、それほど細かくない同心円状の筋を入れたフィルターですので、F値を絞り込むと、効果が更に小さくなります。


共通事項 AF-S NIKKOR 24-85m f/3.5-4.5G + Nikon D850 / F=4.5 ISO=1600 30秒

 画面の中ほどに写り込んでいるのは、銀河の濃い部分です。キット・レンズで、F=4.5では開放で周辺減光が強く、画面端に近づくと薄れてしまいます。夏の銀河の濃いところの1つです。銀塩の時代でしたら標準レンズ固定撮影で、この付近であれば間違いなく点像になる露出時間、30秒なのですが、今や、かなり長い線として写りますので、恒星時運転の望遠鏡に取り付けて撮影しています。本来は、絞り込んで数分程度の露出をするのが常道です。フィルム時代と違って相反則不軌はありませんので、露出時間は延ばし放題です。


  フィルター無し

 デジタルの高画素の時代に入ると、銀塩時代の画素と同等あるいはそれ以下の大きさとなってきて、レンズの方でもそれだけの性能を持つようになって来ました。肉眼では恒星の明度に対応した明るさが感じられますが、カメラの画素の方の許容度を超えてしまっても、回りに刺激がなかなか浸透していかないので、勝手に光の粒が大きくなって明るさを強調することが無くなりました。その結果、写真では星のキラキラ具合が写らないということになったのです。
 このような場合、銀塩の時代から、更に明るさを強調したい場合には、ソフトフィルターを用意して、点像である恒星の像を広げて明るさを表現しようという方法がありました。

  Black Mist

 ブラックミスト・フィルターはフィルターの中に黒い粒を入れて、その回折現象によりソフト効果を持つというものですが、この程度の明るさでは、星像を大きくする役にはたっておらず、コントラストをやや下げる程度になっています。

  SOFTON(A)   (Kenko)

 ソフトンはフィルター面に微細な加工を施して光を分散させ、ソフト効果を得るフィルターです。分散の特徴として中心から離れるほど急速に散乱光が減る傾向があり、明るさに対して、少し押しつぶした饅頭のような配光性で広がりを見せます。弱い方がスペックAです。

  SOFTON(B)

 ソフトンBは、光の広がりがAよりも幾分広く、プロソフトンAよりも広がる傾向があります。

  PRO SOFTON A

 プロソフトンの光の散り方は、中心からの距離で滑らかに減っていくように設計されています。この為、光の広がり方は、ソフトンより広く薄く広がりを持っています。この為、星景写真では適度な露出具合を選択すると、星の明るさによる大きさを制御出来ることになりますが、試しで撮ってみないと判らないので、使用には実験が必要となります。

  PRO SOFTON B

 Aの強化版ですが、ソフトンと同じように、Aよりは若干大きいという程度です。4枚の内では、最も効果があるもので、試しで撮ることが必要です。


 ソフトンとプロソフトンは、その散光の性質の違いと、強さ、AとBで、性質の違うぼやかし方をします。以下、2枚で組み合わせてみた結果は、違いが無いように一見、見えますが、やはりそれぞれの性質が出ています。しかし、2枚重ねたからと言って、それほど加算されたソフト効果は出ていません。拡大して見ても、ほんの少し増えているだけです。やり方に少し違いのあるソフトンとプロソフトンは効果が二重とまでは行きませんが、同系列の組み合わせより出るようですが、2枚で2倍と言うことにはなりません。

  SOFTON(A)+SOFTON(B)

  SOFTON(A)+PRO SOFTON A     (Kenko)

  SOFTON(B)+PRO SOFTON B     (Kenko)

  PRO SOFTON A + PRO SOFTON B


  SOFTON(A)+SOFTON(B)+PRO SOFTON A + PRO SOFTON B

  禁じ手みたいなものですが、4枚を重ねて撮ってみました。準とは言え広角で、さすがに4枚も重ねるとケラレます。プロソフトンABの組み合わせと、一見変わらないように見えますが、拡大し細かく見ていくと、違いがあり、露出量とセンサーの性質で変化する部分があります。


総括

 これらの試行で、レンズの広角側を使用する場合は、点像を広げようという目的の4枚のフィルターについて、大きな差を得ることが出来なかったといって良いでしょう。多少の差はあるにせよ、広角を使う際は、1枚での差があるのは確かですが、2枚以上重ねても、期待した結果を出せないようです。しかし、見た目の印象を記録すると言うことであれば、ソフト効果は必要なものですから、やはり、どの程度の効果を期待出来るか、試し撮りをして確認してから本撮影に臨みましょうというところでしょうか。

 これらのソフト効果を撮影後の画像からソフトウェア的に出そうとしても、現実的に出来るものでも、求められるものでもありませんから、困難です。やはり撮影している中で解決しておくべきものです。