sdwd占星術講座 ゴーグラン・データについて(20021231)
ゴーグラン・データについて
石川源晃氏の『占星学入門』調波編で日本語で紹介されたミッシェル・ゴーグランによる占星資料について、少なくとも日本では、よく引き合いに出される割には、資料そのものや導かれた結果についてあまり知られていないし、検証もされていない様子です。
「統計による占星学の否定が目的として作成され始め、結果が有意になってしまった過去に類例のない資料」というのがふれこみで、「正確な出生時間と出生地」がデータになっているというように伝えられていますが、その後の彼の後を追う研究でたいした結果が得られていない原因も含めて、これらを考えてみます。
「正確な出生時刻」はどのくらい正確か(出生時刻の分について)
フランスでは法律で出生時刻まで公簿に記載すると言うことで、出生時刻が正確に把握されているという説明がありましたが、その点についてデータを見てみましょう。
下図は、俳優1409名の出生時刻の分について、0〜59分の度数分布と、10分ごとに集計した度数分布を棒グラフにしたものです。
1分刻み
10分刻み
左から、それぞれの刻みごとの範囲になっています。これで見ると、0、50、30分が「正確な時刻」の割に集中しています。この他にも10、15、20、40、45分に小さなピークがあります。また、10分おきのグラフでは20分台が少なく、ついで10分台が少なくなっています。この結果からすると、10、20分台のデータを0分に収斂したものがかなりありそうですし、1分刻みで細かいピークのあるデータが、それぞれ収斂させたものであると言うことが言えるでしょう。つまり、時刻としては、5分や10分の差、場合によってはもっと大きいものもあるということになります。
これは俳優についてのデータですが、軍人3047名についても同じような結果が出ています。
1分刻み
10分刻み
この結果から見れば、10分や20分の違いが資料全体に見られることを念頭に置いて、分析を行う必要があります。ハウスの移動は、ソーラハウスのような方法でない限り、平均では1日に一回転ですから、1時間あたり15度、12分割のハウスでは2時間でハウスが1つ切り替わることになります。しかしこれはあくまでも目安で、ハウス分割の方式によって変わってきます。プラシーダスの場合は、黄経上の位置により室に入っている時間が変わりますし、コッホやキャンパナスでもそれぞれの特質のある差が出ます。
いずれにしても、10分や20分の違いで、ハウスが変わってしまうことも十分にあり、その可能性は1ハウスが2時間程度の時間であることからすると12分の1から6分の1にもなるのだということになります。
ハウス配置状況はどうか
源晃氏によって紹介された、1975年のアイゼンクによる俳優の木星の位置が、MC直前の9室に特にピークがあるという発表についてこれを確かめるべく計算してみました。使用した座標系は室座標系で、キャンパナスやレジオモンタナスと同系列のものです。
ハウス座標系
この図は、俳優のチャートのどこに木星があるかを、それぞれ1409名について出し、その位置を5度毎にまとめたものを赤線、10度毎にまとめたものを黒線で表現しています。
特徴は明らかに6室と12室に出ています。最も特徴とされた9室については、突出したものがありますが、室としてみると、さほど多いわけではありません。逆に3室と4室、特に4室については少ないという傾向が出ています。これを直ちに家庭的に恵まれていないと結論づけるのは短絡的だと思いますが、納得する部分がないわけではありません。また。5室と11室にも顕著な落ち込みがあります。出生データの誤差を考えても、このあたりについては少ないという傾向が出ているわけです。
続いて、ASCとMCからの黄経差をまとめた図です。MCからの黄経差の図は、MCを270度の位置に置いたものとして作図しています。左図はASCと木星のアスペクトと見ても良いでしょう。大変興味深いことに0,90,180,270度の直前にピークがあります。この他に135、225度が明確に見えます。座相としてみると0,90,180度については接近ではなく離反になります。俳優としての成功にASCと木星の間に90,120,180度の接近または135度の座相が有利に働くと断定することは、未だ危険ですが、有意な脈があることは明らかです。
これに対して、MCからの角度は、9室の中にピークが出ていますが、座相で言うと120度と60度のデクスター&離反についてややピークが見られます。
これらの特徴は、何れも決定的なものではなく、一部にその傾向があるようだという結果にしかなっていません。ですから、これを持って、占星術の統計的証明になると言うように大上段に振りかぶって扱うものではないでしょう。それより、これらの様子から占星術の方法を多少でも見直して、よりよい占星術の組み立てを考えることが建設的な態度です。
参考までに、俳優のハウス座標系による配置を付けますので、これから何か「見える」かどうか検討してみてください。