SGSmS's A. −−−位置

SGSmS's A. −−−位置を表す

 占星術で星々を使うには、星々の位置を記した天体暦を使っていました。コンピューターを使うようになっても、本の形に整理された天体暦は、やはり便利なものです。しかし、その天体暦やコンピューターから出力される天体の位置は何を基準にしてどの様に表されているのでしょうか。この様な点も、しっかりと把握しましょう。

 平面上で位置を表す場合を考えてみましょう。二つの考え方があります。
  A 直交軸を用意して(X,Y)の様に表す方法
  B 自分の場所に分度器を置いて、方向を定め、方向と距離で表す方法空間に拡張すると
  C 直交軸を3本、用意して(X,Y,Z)の様に表す方法    →直角座標
  D 自分の場所から、方向を定め、方向と高度、距離で表す方法  →球面座標

 ところで、天体に関しては、距離が途方もなく大きく、かつ、判らないことが多く、惑星の軌道計算でも、距離が判らないと言う前提で計算しますから、事実上、位置を表す際に距離は、外してしまうことがほとんどです。
 どちらの方法も、一長一短があります。計算しやすいのは直角座標ですし、感覚的に直ぐ判るのは球面座標です。天文学では天体の位置を表すのに、目的別に、幾つかの球面座標系を用意しています。その内で、重要となるのは、赤道座標と黄道座標、地平座標の3つです。また、地球の表面の位置を表す緯度経度も球面座標の1つです。この4つの球面座標について整理しておきましょう。
 球面座標の要は、基準面です。球の中心を通る1枚の平面を定め、基準面の1方向に基本軸を定めれば、球面座標が確定します。ですから、4つの球面座標の違いは、基準面と基本軸の取り方にあります。従って、座標変換の公式を使えば、各座標系同士の書き換えが出来るのです。

SGSmS's A. 042 −−−地平座標系(=水平座標系)

 地上の東西南北と高度で表すのが、最も簡単な方法です。これを地平或いは水平座標系と言います。真南の地(水)平線上を基準にして、右回りに(南から西に向かう方向で)方位角を計り、地平線からの高さを高度として、方位角と高度の2つの要素で位置を表示します。この方法は地平線と自分を含む面、地平面を基準にした位置の表し方と言えます。
 地平座標では、先ず、地平線又は水平線の一カ所を基準として定めます。たいていは真南の一点を使います。其処から左回り(南から西方向)に方向を何度と言うように表します。更に高度を言えば、誰でも間違いなくその位置を見ることが出来るでしょう。勿論、もっと正確に位置を表現するなら、距離をつけ加えます。
 この座標は、地上の物体や、人工衛星の位置を表すのに便利な座標です。しかし、地平座標で地球外の位置を表現すると面倒な事が幾つか出てきます。先ず、観測する場所が違うと、同じ物体を追いかけても、座標の値が違ってきます。また、目標が地球の中に対して運動していなくても、地球の回転によって座標の値は、方位角、高度共に、どんどん違う値になってきます。この事を使って、観測地の緯度経度を出す事が出来ますが、天体に対して地平座標は、使いにくいものです。そこで、天体の位置を表すために、使いやすい別の基準が用意されています。
 ところで、占星術ではハウス(室)分割を使う場合が多いのですが、黄道面上の分割を考えるだけのものがほとんどです。基本的にASCやMCを基準として使う分割法が中心ですが、立体的な状態をつかもうとする研究は余り進んではいません。いってみれば、ハウスは地平座標系の応用項目です。

SGSmS's A. 043 −−−緯度経度

 ところで、天文用の座標系に入る前に、もう一つ極座標系を使っているものを整理しておきましょう。それは、緯度経度のことです。地上の位置を表すのに緯度経度を使うことを知らない人は、少なくとも日本ではほとんどいないと思いますが、話の筋ですから、対応させておきましょう。
 緯度経度の基準面は、地球の赤道面です。また、地上の北極と南極を結ぶ線(経線)の内、イギリスのグリニッジを通る線が赤道と交わるところを基本軸とします。ここから地平座標の方位角に相当する経度を計ります。また、高度に相当するのが、赤道からどれだけ離れているかを示す緯度ψです。緯度が高いと表現するのはこの為です。角度は普通0度から360度までで表すのですが、経度は東回りをE0度からE180度、西回りをW0度からW180度で表します。また、緯度は北側を+或いはN0度から90度、南側を−或いはS0度からS90度で表します。

SGSmS's A. 044 −−−赤道座標系

 緯度経度の表し方を天に投影したと思えば、かなり近い理解です。地球の赤道を天に投影したものを「天の赤道」と呼びます。これを含む面を基準面とするのですから、緯度経度と同じ基準面です。違うのは基本軸です。地球は約1日で1回、自転していますから、我々から見ると天の星々は1日で約1回転しているように見えます。しかし、星から見れば、地球が回っているのですから、緯度経度の基本軸も廻っていることになります。星の位置を表すには、それでは不便ですから、基本軸を、そうそう動かない春分点に取って、座標を表します。
 つまりこの方式は、地球の自転を考えた位置の表し方と言えます。従って、位置観測の結果は、赤道座標で表されるのが普通です。用語として、経度は赤経α、緯度は赤緯δと呼び名を変えます。この方式は実際の観測向けです。と言うのは、この方式で表された座標の赤経と現地の経度、その時の時間に密接な関係があるからです。
 ところで、赤経は角度ではなく時間で表示します。1h30m45sと言う具合です(hmsは右肩に付けるのが普通ですが、DOSの標準テキストでは、表示できません)。360度を24時間で表しますから、1hは15度に相当します。また、赤経は天の赤道の北側をプラス、南側をマイナス付きで表示するのが普通です。

SGSmS's A. 045 −−−黄道座標系

 最後になりましたが、基準面として太陽の通り道(黄道)を含む面に取るのが、黄道座標系です。この方式は、地球の太陽を巡る動き(公転)を主に考えた座標です。ですから、太陽系内の天体の位置を表すには最も適した方式です。基本軸は赤道座標と同じ春分点にとり、黄経λ、黄緯β共に角度で表します。黄緯は北側がプラス又はN、南側がマイナス又はSで表すのは、今までの座標系に共通です。
 赤道座標系と黄道座標系の関係は、地球の自転と公転の関係と同じです。春分点と秋分点を軸に約23度程、傾いています。
 黄道座標系の黄経が、占星術で最も使われる位置表示です。太陽系の天体は、ほとんどが黄道、つまり地球の公転面と余り違わない公転面を持っています。従って、一枚の紙の上に、黄経だけを書いてチャートを作っても、実際の状態とそう大きな違いが出ることはあまりありません。黄道から外れたり外れることのある天体、冥王星や火星の位置は注意しなければならないことが時々出てきます。黄道上にない天体は、時には、プラシーダスやレジオモンタナスの12室に天体があるのに実際には地平線の下だったり、6室にありながら、地平線の上にあると言うこともあり得るわけです。ここで、座標系の話をしているのは、これらの現象を正確に捉えるためにも必要なステップと思います。
 この他にも、銀河系を基準にした銀河座標等がありますが、何れも極座標系で、上記の座標系を回転させたものになっています。

 黄道座標と赤道座標の変換のための球面三角による公式を上げておきましょう。
 cosβcosλ= cosδcosα
 cosβsinλ= cosδsinαcosε+sinδsinε
 sinβ   =−cosδsinαsinε+sinδcosε

 cosδcosα= cosβcosλ
 cosδsinα= cosβsinλcosε−sinβsinε
 sinδ   = cosβsinλsinε+sinβcosε

   α:赤経  δ:赤緯  λ:黄経  β:黄緯  ε:黄道傾斜角

SGSmS's A. 046 −−−春分点

 黄道座標も赤道座標も春分点を基本軸としていますから、春分点についても十分に理解する必要があります。黄道と赤道が交わっている点は2つあります。太陽の動きを赤緯から見ると、春分点を通過して南から北側に入ります。同様に、秋分点を通過して北から南側に入ります。
 ところで黄道面は、太陽を巡る地球の軌道面なのですが、黄道面以外に存在している天体からの影響を受けて、黄道面自体が動いてしまいます。その最大のものは、月の影響です。月は黄道面から5度ほど傾いた軌道を持っています。この為に、非常に複雑な影響を与えています。また、他の惑星からの影響も受けています。これらの動きを章動と呼んでいます。(月の軌道は白道と呼ばれていますが、白道と黄道の交点に月の昇交点(ドラゴン・ヘッド)、月の降交点(ドラゴン・テイル)の名が付いています)
 次に天の赤道ですが、これも不動の座標系ではなく、簡単に言えば、地球の自転が、コマの首振り運動のように2万6千年程度の周期で回転面を動かしているので、この周期で春分点は黄道上で逆行して行きます。また、地球の公転軸と自転軸の角度は23度ほどと述べましたが、これも固定のものではなく、変化しています。その上、地球の自転運動は、時刻のところでお話ししたように、微妙な変化で非常に複雑になっています。
 さて、赤道座標系と黄道座標系がそれ自身、変動のあるもので、その2つの接点の春分点が、いかに微妙な運動をしているか、頭がきりきり舞いしそうになってきましたが、これも精度を上げてしまった結果です。座標系も、ぎりぎりの精度のところは専門家に任せて、適当なところで、妥協して使わなければならないのが実状です。
 春分点として、SGSで採用されているのは真春分点と平均春分点です。平均というのは、微妙な変動をならした(つまり月の影響をならした)春分点の位置です。真位置は、月の影響(章動)を考慮した位置です。その差は、微妙な量ですが、回帰図のASC(ハウス)を見ると違いが出てきます。逆に言うと、回帰図でなければ違いは判らないほどでしょう。
 同時にSGSの春分点の選択として、幾何学的位置と視位置と言う選択がありますが、これは春分点とは関係がありません。回帰図を書く際の精度向上の一環として、太陽位置を幾何学的な位置と、目で見える位置との切り替えが出来るようにしたものです。太陽以外の位置には、関係しない項目です。

SGSmS's A. 047 −−−1度は1度を見て

 色々な天体がありますが、日月5惑星くらいは、自分の目で見ておきたいものです。これを書いている1994/8下旬は、夕方の空に金星と木星が見えます。日が落ちて暗くなる前に、もう明るい2つの星は見えています。このランデブーは、9月の終わりに黄経の合となります。この時は木星に金星が追いついて合となります。この後、金星は逆行して、10月の半ばに再び木星と合になり、また順行して来年の1月中旬に木星と合になります。金星と木星の合と言うと、占星術上、吉星同士の合ですから、良いものと思いますが、合と言うのを一度は見ておきたいものです。金星と木星の組み合わせだけでなく、月が相手であれば、結構、頻繁に合になっています。
 さて、9月の終わりの金星と木星の合ですが、合というのはぴったりくっ付くものと思っていると、意外な程に離れていて、見てがっかりする人が多いと思います。この例では、7度程離れています。空を見て、7度離れているというのは、並んだ星の間に、月が14個入る角度です。想像してみて下さい。そして、現物を見て下さい。太陽や月の見かけの大きさは1度の半分です。
 座相の許容度を8度や10度に取る人もいますが、現物を見て、実際の角度を実感して許容度を設定して下さい。概略ですが、腕を伸ばして、指を見ます。個人差はありますが、爪の幅は1センチメートル程度でしょう。目から手の先まで60センチメートルとすると、これが1度位です。月と比べてみて下さい。手を広げると、20センチメートル程度でしょう。そうすると、これが、約20度と言うことです。
 太陽と月の合は、新月と呼ばれていますが、この場合も、普通は外れているので、日食にならないのです。月の軌道は、黄道から5度程傾いているといいましたが、つまり、新月の時、太陽と月は最大5度離れていることになります。そして、新月の時、見た地点で、太陽と月の位置が0.5度以内であれば、日食ということになるわけです。