SGS's Astro 東京始源図1

 進行でも経過でも、そして出生図ですら、判断の際の各要素、サイン、ハウス、アスペクト等とそれらの関係を一律に定型として扱うことが出来ないことが、占星術を始めた人々の最初の難関であると思います。例えば、進行の太陽が出生の木星や金星にイージィなアスペクトを作った場合、一般的な傾向として良いのではないかなとは言えますが、だからと言って100パーセント、良いことがあるとは言えません。まして、出生図に明らかに問題がある場合は「幸運」はさっ引いて考え、出生図で大丈夫そうであれば、ディフィカルトなアスペクトでも恐るるに足らないのです。それどころか、出生図の構造によっては、通常の「幸運」が逆に働きかねません。ですから徹底的に出生図を分析することは重要な作業ですが、それにも増して、進行&経過を考慮した分析が大切と言えましょう。可哀想な例ですが、進行や経過が良いパターンで、軍隊でトントン拍子の出世をし、敗戦で戦犯となり、獄死と言う場合もあるのです。その同僚で、開戦と同時に退役して、軍人として力がありながら戦争と関わらず、財産を築いて大往生出来た人もいます。

 話を戻して、とにかく理屈をこねるだけでは、出来るようになりませんから、実占あるのみ。
 先ず例として、皆さんに入れていただいた昭和天皇では、個人的なデータに欠けます。これは致し方ありません。天皇は人間であるという宣言をしなければならなかったくらいですからね。大正天皇も明治天皇も、業績は高らかに言われますが本人の性格や、悲喜こもごもについて赤裸々な部分はありません。本当は、誰もが知っていて教本的な例がたくさんある人がいればよいのですが、そう欲張りなことは言えません。ここで、人間ばかり探すから、見つからないのだと言うことで、東京と言う地方に付いて見てみましょう。

 拙著『運命を把握するパソコン占星学』のP.248に東京始源図考察の項でMCの太陽通過を用いて判断しました。これはあくまでも便宜的な方法ですから、当時の天皇が宮城に到着した時間が欲しかったのです。図書館で調べたところ、1969年3月7日卯の下刻に建礼門を出発、二十日かけて3月28日午刻に入城と言う記録を見つけました。日付が旧暦であることに注意して下さい。午刻は11時から13時のことですが、ここでは一応12時に近い意味で書かれています。12時ジャストとするとMCの太陽通過とたいして変わらない時間と言えますが、微妙な差が出てきます。さて、人間では無いのですが、そんなに方法論的な違いはありません。拙著を参考やたたき台にしてもよろしいと思いますが、「出生図の解読」をしてみて下さい。東京が再び首都となった図ですから、再び違う場所に遷都されない限り、このチャートが「生きる」のです。

 ところで、この東京始源図は天文暦拡張A版を使って拡張しないと使えませんが、出生と進行を見るだけでしたら、天文暦拡張A版のみをフロッピーに入れて、天文暦として指定すると、1742/11から1876/6までの天文暦として使用できますので、フロッピーだけのユーザーも使えることになります。

東京始源図
1869/5/9 12h00m東京

 「運命を把握するパソコン占星学」P.248、東京始源図考察と重なりますが、チャート上で、上昇星となっている火星、土星は4室でYOD、そして自分の支配宮にいる金星、等の特徴があります。さて、この「出生図」から予想される東京の事件は、上昇する火星の火事や戦火、4室の土星の災害、金星で経済力がメインテーマとなるのは明らかです。

 火の関連で現実に今まで起きたことは、
                     焼失戸数  死者
1870/ 1/29 京橋の大火     3400戸 22名
1872/ 4/ 3 銀座の大火     2926戸 3名
1873/12/ 9 神田の大火     5000戸
1876/11/29 京橋数寄屋大火  10000戸
1878/ 3/17 神田黒門町大火   5200戸
1879/12/26 築地の大火    10000戸
1881/ 1/26 神田の大火    15000戸
1892/ 4/ 9 猿楽町の大火    4000戸 24人
1899/ 8/12 横浜伊勢佐木町大火 3200戸 14人
1911/ 3/31 鶴見の大火      200戸
1911/ 4/ 9 吉原の大火     6400戸 5名
1913/ 2/20 三崎町の大火    2380戸
1919/ 4/28 横浜千歳町の大火  3100戸
1921/ 4/ 6 浅草の大火     1227戸
1923/ 9/ 1 関東大震災   447128戸 死者9万9331名
                           不明4万3476名
                         全半壊25万4499戸
1945/ 3/10 東京大空襲   268358戸 8万3793名

 この他に桜木町国電火災106人焼死があります。敗戦以降は、これやデパートやホテルの火災を除けば、大規模に延焼した火災がありません。関東大震災に学んだ消防対策の勝利とも言えましょう。しかし、その分、ツケが東京大空襲に廻ったような感じがあります。上記の1870年から1921年の比較的小さな「大火」を別にして、関東大震災と東京大空襲に焦点を当ててみましょう。

作業名
関東大震災の東京始源図によるチェック

使用する基本データ
 1869年5月9日12時00分(JST) 東京 東京始源図 明治天皇入城
 1923年9月1日11時58分(JST) 東京 関東大震災 災害地震火事

作成チャート (3重円)
出生=東京始源図
経過=1923年春分
   1923年夏至
   太陽回帰 1923年
   月回帰  1923年8月
   関東大震災
 以上5枚

 5枚のNPTの3重円のチャートを良く見て、特徴をみましょう。

  1923年春分
 経過の影響としては、冥王星が進行する太陽の上に乗っています。経過の海王星は経過の金星と衝で出生のMC付近にある太陽金星冥王星ブロックとTスクエアです。経過の天王星は出生の天王星とはトラインでも出生の土星とはスクエア、経過の土星は出生の海王星と月の合に対し衝、経過の木星は出生の太陽と衝、経過の火星は経過の月とセットで出生の太陽金星冥王星に関わりがあります。他に、進行の太陽は進行のASC及び月とT字スクエアを作り、東京が内在的に問題のある時期であることを示しています。

  1923年夏至
 春分図で先ず取り上げた経過の冥王星をキーとするT字スクエアの不気味な示唆に対して、経過の火星、土星、進行のASC、月がそれに重なって強力なパターンを作っています。

  太陽回帰 1923年
 さて、今回のチェックのメインディッシュとも言うべきチャートです。東京始源図の重要ポイントである土星+天王星+冥王星のYODの鍵となる土星に対して、経過のASC、火星、MC、天王星、月でグランドクロスを作ります。またYODのもう一つの構成要素、天王星に対しては、進行のMCが合、進行のASCと経過の土星、金星でT字スクエアとなっています。

  月回帰  1923年8月
 太陽回帰がこれだけ派手に示していますから、月の回帰ではASCとMC、火星の位置が「補強工作」をしているとだけ指摘しておきましょう。

  関東大震災
 さて、上記4枚に比べると「パンチ」に欠けると言ったら不謹慎になりますが、それなりの関係があるとは言え、この1枚の3重円から十数万人の死者を想像するのは、如何なものでしょう。そうだと思ってみれば、言えないことはないですが、前記の4枚のチャートがなければ、戦争かねぇ位のことしか、少なくともわたくしには判りません。勿論、十数万人の死者は火災による死亡者が大半を占めていますから、この瞬間に亡くなったわけではなく、この後の「事件」になるわけです。

 ところで、マンデン的手法で言えば更に新月、満月、日食、月食のチャートを参考にしますから、関東大震災の関連のチャートはあと4枚、かけるわけです。
 一応データだけ
  日食 1923年3月17日21時52分(JST)
  月食 1923年8月26日19時31分(JST)
 それぞれ、興味深いチャートだと思います。

作業名
東京大空襲の東京始源図によるチェック

使用する基本データ
 1869年5月9日12時00分(JST) 東京 東京始源図 明治天皇入城
 1945年年3月10日0時より2時半頃まで(JST)東京 東京大空襲

作成チャート (3重円)
出生=東京始源図
経過=空襲時
   1944年春分
   1944年冬至
   太陽回帰 1944年
   月回帰  1945年3月
   直前新月 1945年2月13日2時33分(JST)
   直前満月 1945年2月27日9時7分(JST)
   直前日食 1945年1月14日14時6分(JST)
   直前月食 1944年12月29日23時39分(JST)
 以上9枚

 ちょっと方法のまとめ

 関東大震災よりも新月満月日食月食の4枚を増やして9枚になりましたが、同様にNPTの3重円のチャートを良く見て、特徴をみましょう。

 特徴を見る際にアスペクトを見た瞬間に判断出来る天才的な方は別として、座相線を引くのが、普通であると思います。座相線の設定は、全ての組み合わせについて合90度衝のいわゆるハーモ4タイプに限り、オーブも一種3度、タイトは1度としてみると判断しやすくなります。この方法はグランドクロスやT字スクエアに絶大な効果がありますが、YODのようなものは自分で注意しなければならないでしょう。

 この9枚の3重円チャート、1枚として半端なモノはありません。どれも、眺めていてうなり声が出ます。

 ところで、国内の文献はともかく、外国の文献を見ても、このチャートはこの星が何々でアスペクトがどうこうと言った教本的な本は少ないようです。それらを見ても、個人のチャートに対するソーラ・レボリューションは紹介されていますが、いわゆるマンデン方面ではほとんど問題にされていません。占法の基本的な使用法として、出生図に当たる始源図は進行と共に使っても、「時」の選定としてイングレスを使うのが一般的で、会合図等すら余り使いません。確かに始源図の確定は、なかなか難しい作業ですから、使わない方向で話が進められるのがもっともであると言えます。しかし、個人のチャートでも集団でも基本的には同じだとわたくしは考えていますので、個人に使って効果的な手法は、当然、集団でも有効ではないかと考えます。そこでその実例として、東京始源図に対する2つの事件、関東大震災と東京大空襲を上げてみたのです。
 どうでしょうか。2つの事件に関わるチャート、それぞれ9枚になりますが、ご覧になって、ご自分なりのレポートが作れるのではないでしょうか。これらのチャートを見ることは、単にこれらの事件への興味だけでなく、未来予測技術である占星術の体系と方法を身に付ける1つの非常に有効な手段であると思います。東京の未来に、この2つの事件に匹敵する出来事が起こるでしょうか。その答えを出すための占者の側の準備といえましょう。

 方法のまとめ2

 ここまでの作業で、ソーラ・レボリューションを含めた特別な経過と、進行を併せて出生図を読んでいくという作業の流れの概略をおわかりになったと思います。これだけでも、かなりのレベルの占星術を駆使していると言えるでしょう。ここまで来るのに、普通の場合、初めて占星術に接してから数年はかかると思います。興味を持って集中すれば1年か2年で可能になるかもしれません。それだけの体系を持っていますから、「直ぐ出来る」方法はありません。ですから、安易に判断出来る事を唄った手引き書を使っていると、その先の進歩が無くなります。簡易攻略本でなくても占星術の本を買ってきたら、早くそれを乗り越えないといけないのです。同じく、この書き込みも早く乗り越えて下さい。「出生図の解読」は出生図1枚で終わるものではないのです。占星術入門書では、進行や経過について、余り詳しくありません。出生図の解釈で手一杯のことが多いし、天文暦を付ける関係でページ数が足りないと言うこともありましょう。また、それ以上は自分の教室で金を払えと言う場合もあります。その様な中で、興味を持って勉強を始めたにも関わらず、出生図1枚の解読に終わってしまう方が多い事を心配しています。
 理想を言えば、機械に頼らず、感受点位置が立て板に水のように出てくれば、最高ですね。それに近い人もいますが・・・それは特別な人ですから、凡夫は、地道に行きましょう。

 ところでせっかく東京始源図を入れているのですから、去年や今年の「運勢」を見ることが出来るでしょう。大規模な災害を予測するより、目の前の状態を見る方がより事実に近いと思います。日本国始源図で見ても、首都東京のチャートでも景気や外交は似たように出ることが多いようです。そのあたりを本フォーラムの未来予測部屋で発表することは大変に勉強になると思います。