SGS's Astro 経過(トランジット)について

 ソーラ・レボリューションが経過(トランジット)の特殊な「占機」であることは既にお話ししましたが、天体は連続的に運動していますから、チャートの敏感な点を、何時かは通過することになります。極端な話、チャートに特に重要なポイントがある場合、経過の太陽が毎年ほとんど同じ日に来ることになりますから、毎年、その日は「怪我をする日」「プレゼントをもらう日」「失恋の日」等のことにもなるはずです。
 しかし、このような例は無いとは言いませんが、希なことです。第一、同じ事件が繰り返し起こったとしても、事件に学ぶことが可能であれば対処が違ってくるでしょう。
 また、太陽ならば毎年ですが、木星は11〜12年で巡ってきますので、20才で経過の木星と出生の太陽が合になった人は31〜32才位でまた木星がやってきます。
 一般に幸運期とされるこの時期の使い方は、チャートの他の部分との兼ね合いを考えに入れなくても、年齢と経験によって違った形、目的になるのが普通でしょう。ですから、例えば経過の木星が出生の太陽を通過するときに、進行の感受点がそこに何らかの関係、影響を及ぼしていなければ、効果が無いと判断しなければならないのです。確かに、これは極端な例です。たいていの場合は、進行の感受点が、何らかの形で関わっていますから、出来事が起こりやすいでしょう。先に述べた昭和天皇のソーラ・レボリューションにおけるASCと出生の土星について、進行の感受点をチェックしてみると関係がありますから、未来予測の場合も事件有りと断じてよろしいわけです。

 先の話から、経過の天体の状況だけを見て一喜一憂するのは、筋が違うのだと言うことがおわかりかと思います。しばしば、だいぶ慣れてきた方が、「問題となる時期」では無いにも関わらず、視野狭窄の状態に陥って、判断を誤ることがあります。どちらかというと、占星術に才能を示す方は天王星をはじめとして、チャートに神経質な点があるようです。神経症になるくらいではないと上達しないと言う意見もありますが。
 それはともかく、経過天体の状態に関して、どの感受点の星座宮がこれこれで何室の時、座相がこの場合は何々の事件と言うような一般論、マニュアル的なものが書籍に載っています。進行座相についても同じことが言えるのですが、自分で判断する際に、それらが足枷にならないように勉強する必要があります。マニュアルを見る際は、マニュアルを頭に入れることも必要でしょうが、どのような理由からマニュアルに書いてある事態が起こるのかということを、類推するのがもっとも勉強になります。
 勿論、始めの内は何事についてもマニュアルがあると安心ですし間違いも少なくなるでしょうが、物事がマニュアル通りいくと思ったら大間違いで、人生はマニュアルのない不安な旅と言えるでしょう。当然、その人生を扱う占星術にマニュアルは、そう役に立つわけではありません。占星術の本を大量に集めて、結局進歩が少ないというのは、マニュアルを求めているからです。
 経過の木星が出生のASCや太陽を通過するときは幸運期と言われるのですが、どうしてでしょう。そう問われたときに、木星やASC、太陽、コンジャンクションのイメージを展開して行けばよいのです。最も簡単に、「木星は幸運の星、太陽は生命力だから生命力のパワーアップだ」等という調子から始めていきましょう。引き続いて「生命力がパワーアップしてもそれを生かす状態がなければならない。出生図をよく見よう」と言う具合です。

 経過のまとめをしておきましょう。
 経過の感受点が出生や進行の感受点を通過するときは「占期」となる。つまり、経過の感受点の接触が出来事の起こる目安ではなく、チャートを作成する時の目安となる。そこから、ソーラ・レボリューションや会合図等を作って判断するのです。この延長がイベント・チャート(ある事件そのものや事件の始まりの時間で書いたチャート)、或いは、マンデン、ホラリーにつながるのです。
 忘れてはならないのが、出来事の原因は経過の感受点にあるのではないということです。経過の感受点の位置の状態と出来事にシンクロニシティがあるだけで、突き詰めて行くと出来事の原因は本人にある事が判るはずです。
 とにかく、天文暦を眺めて天体が特徴的なアスペクトを作ったからと言って、一喜一憂していては、身が持ちません。しっかりとチャートを見て、「事件」が有りか無しか(有りなら、それなりの輻輳した座相や意味の強調が必ずあります)、良く判断しましょう。
 つい先頃、起こったロス地震ですが、わたくしはてっきり震源は東京方面だと思っていました。まあ、口外するような事ではありませんが、内輪の話では話題になっていました。わたくしは判断を誤っていたのですが、ここで、皆さん、居直りましょう。間違ったって良いのです。誰に迷惑をかけるわけで無いという範囲であれば、構いませんね。なぜ間違えたのかを、ちゃんと追求しておけば勉強になります。「やらない」よりも「やって間違えた」ほうが良いのです。「やらない」は「出来ない」に通じます。

経過の補足

 経過の部分の最後としてレボリューションについてしつこく補足しておきます。SGではサポートしていませんが、レボリューションの時を出すために、サイドリアル方式を提唱する人がいます。サイドリアル方式というのは、天球上に固定した座標を想定して使う方法で、微妙な量ですが動いて行く春分点を基準にしたトロピカル方式と対をなすものです。ソーラ・レボリューションで言うと、1年で20分ほど違ってきます。3年で1時間になるわけですから、時間に厳しいソーラ・レボリューションでは大分違うチャートになります。天文学ではトロピカル方式もサイドリアル方式も使っています。占星術のトロピカル方式は視位置、サイドリアル方式は「分点」(時間の基準)で表す座標の事です。今年の理科年表では、太陽の赤経赤緯が視位置(トロピカル)、黄経黄緯はAD2000年1月1日21時(JST)の春分点を基準にしたサイドリアルでまとめられています。誤解の無いように言い添えておきますが、サイドリアル方式は基準となる「時間」の設定が必要です。植田訓央氏の「現代占星学」で紹介されているサイドリアル方式のアヤムナサ表はA.D.229年の春分点を基準にしています。
 ここで問題にしたいのは、感受点の位置の度数に意義を認める方式、つまりサインやサビアンはトロピカルでなければ意味を失うと言うことです。サイドリアルは、適当な基準を定めると、ある感受点の位置の表し方が0度から359度まで全部可能なのです。従って、サイドリアル方式を採用するからには、新しい占星術の方式が必要になるでしょう。

 経過の補足に、このようなことが入るのを不思議に思うかもしれませんが、出生図は、ある瞬間のトランジットなのですから、良く理解しておかなければならないのです。ある瞬間に「生まれた問題」が、その時の天体配置とシンクロニシティすると考えるのが占星術ですから、その時々の天体配置と「問題の展開」がシンクロニシティしていることが考えられます。これが出生に対する経過の働きであり、あたかもトリガーの如く作用するのです。
 経過が外から来るものであれば、中から来るものもあります。これが進行と考えられます。これから述べる「進行」は言ってみれば体内時計のようなもので、ある瞬間に始まった出来事の、元々持っている傾向が強調される時間を示すと考えられます。