占星術講座SAT 三島由紀夫(みしま ゆきお)(20190722)
押しも押されもしない大作家で、知らぬ方は いらっしゃらない有名な方です。もしかすると、作品と共に行動も有名なのかとも思われます。評価は色々あるかと考えます。作家或いは人物としての分析等は、並み居る学匠、愛好家が進めていますので、ここでは、単に占星術的な観点からの特徴の指摘を行ってみます。最初に明らかにしておきますが、わたくしは氏の作品を一行も読んだことがありません。手に取ったことはありますが、中を開く前に1970年の事件のニュースがフラッシュしてブレーキがかかるのです。書評も読んだことがありません。ですから、文学や関連の問題について、何か言える立場ではありませんので、それらの観点でのバイアスはありません。門外漢としての立場だということです。
作家としての名前は、三島由紀夫、本名は、平岡 公威(ひらおか きみたけ)です。父は平岡梓(ひらおか あずさ)、母は倭文重(しずえ、旧姓 橋(はし))、1925年(大正14年)1月14日午後9時、現在の新宿区で出生です。
この日時で作った出生図から導かれるものは、占星術上の良い例となる特徴を備えています。
解読の前振り
解読をしようと思い立ち、3重円タブ機能で多数のイベントチャートを作りました。しかし、解読を始めても、結果がなかなか出ません。この事件で、星が来ていないといけないはずなのに、何も無かったり、重要なエポックになり得るアスペクトが来ているのに何も起こっていない。こじつけでもと努力しても、思うようには行きません。何か原因が在るやらんと思いながら、まあ出来ないこともあると言うことで、一時、放り出していました。それでいながら、トゲのように刺さっていたのも事実です。これだけの鍵となる事例がありながら、特異な点を出せないことについての、技術や方法論への疑義へ、気持ちが向かっていたのです。
そして、リベンジのようなものとして三島氏(以下、氏と略す)の父親(生時不明)、平岡梓を見たところ、こちらも、さすが名文士の父です。意外なことに、なかなか興味深い人物で、そのぶっ飛びようが面白く思えました。逝去から誕生までの逆時系列で整理をしていて、長男(つまり、氏)出生に辿り着いて、長男出生データをタブ情報から移し、更に結婚の日時を追加すると、結婚前に長子が生まれていることになってしまいました。見合いですし、結婚前に氏が誕生したと言うことはありません。何かが間違っています。データのチェックが必要です。そこでデータを逐一チェック、長男出生に正しい日時の1年前が入っていたことに気付いたのです。で、整理して作った「三島由紀夫タブ」に入ったデータを確認すると、全て一年前のデータが入っています。元を作って、元から全てコピーしているのですから当然です。こうやって、やっと気が付いたという情けない次第です。まあ、言い訳をすると、違うなと思ったことは確かで、それをレクチファイしてみるということをやっていなかったということになります。反省。
本題は、氏に父親と母親がいて、氏の成長に関わっているということ。また、氏の育成には他の人々の手が関わっていること。氏の特殊事情ではなく、世間一般、当たり前のことですが、このところに、前回の「京アニ放火」で記述した、同じ出生でも違う働きと未来がありえるということの原理があります。つまり、同じ出生時でありながら、各感受点の意味付けに両親その他から受け継がれたものが有るという押さえです。例えば金星は愛情や金銭の星ですが、それは等しく平等なものでは無く、その出生を生むに至った両親の影響により、その内容に、それなりの変化かあるということです。この血の繋がりからの規制を使って、絶対的に縛り上げている社会が封建制です。しかし、現実社会でも、親の財産規模と子供が無関係という事態は稀でしょう。何れも絶対と言うことでは無いながら、考慮すべき内容であるべきだ、ということです。ただし、出生図解読のために、近親のチャートを使うと言うのは、今回は計画に入っていません。
0 時刻についての評価
出生時刻の正確さの評価として、現在のように秒レベルの精度は一般に普及してはおらず、日常の生活に置いては、そこそこアバウトな扱いで、サイレンや鐘がまだまだ使われていた時代です。ということは、大まか9時だということで、手元の電波時計で見た時刻の精度は無いので、10分や15分の違いがあっても不思議はありません。その程度の精度と見積もることが出来ます。それでも、氏の上昇星が月、上昇宮は乙女座宮であることは間違いなさそうだと考えて良いでしょう。
また、座相の許容度については、3重円タブではデフォルトで出生図メジャーが6度となっていますが、こちらの場合、8度としています。
1 出生図
チャートには、許容度を多めに取ると(メジャー8度です)、月、土、天、冥の4星によるカイト(占星術基礎講座、座相16番カイト)があります。キーポイントは上昇点に近いところにある月です。一般的には母や妻を示すとされています。上昇点は本人を取り巻く環境そのものと見ることが出来ますから、この近くにある月は、氏の出生からある程度の成長までの支配星として働くと共に、カイトの主軸にある2星の1つとして、大変に重要な位置付けを持っています。また、生時修正の鍵にもなり得る位置にあります。
氏の場合、出生直後から育児に祖母が主導権を握り、母親に育てられると言うよりは、祖母が支配したという状況が12歳まで続きます。出生図の月は祖母になるのでしょう。その間、階段から落ちて怪我をしたり、病気にかかったことがあります。その中でも5歳の時に死の一歩手前までいったところで、伯父の医師が診て助かったということがありました。この時代、子供の死亡率はかなり高かったので、葬送品の用意までしたようです。ただし、こちらについては1月としか記録がありませんでしたので、図として入れていません。
2 中等部進学・引越
12歳です。中等部に上がると共に引っ越しをして、祖母の支配から脱します。転居とタイトルを付けていますが、転居自体は何度もしています。しかし、生活の変化ということでいえば、ここが一番の勘所と言えます。カイトを構成し、基軸となる月と天王星のオポジションがもたらすものは、変化であり、突然で決定的なものでしょう。月が本来の母親として機能するのです。
このとき、出生太陽に経過木星が来ています。木星による12年に一度の幸運期です。更に、カイトを構成している感受点の中に、進行の水星と金星が入って来て、ホームベース(座相17番)が作られようとしています。ホームベースで特徴的なのは、特定の場所、ホームベースがグランドセクスタイル(座相19番)に昇格する位置に進行や経過の感受点が入ってくると、劇的にチャートが動く、つまり重要な事件が巻き起こったり、状況が変わるということです。グランドセクスタイルは、ある意味、完成の座相ですが、棚ぼたで来るものでは無く、持ち主の努力と研鑽で運が開くという性質ですから、何もしないで、ぼた餅が落ちてくるのを待っていると、落ちてこないし、落ちても消費期限切れになっています。
しかし、チャンスとしては、感受点が進行天体であれば、何年か掛けて解座するまでに、何度もあるはずです。経過には毎月、そのポイントに月が来ますし、太陽から金星でも1年に一回程度は来るでしょう。チャンスが何度もあり、ものに出来る努力があれば、必ずリターンがあるという、これ以上の感受点配置はありません。
3 入隊検査不可
20歳です。今では考えられない事態ですが、お上から令状が来て、兵隊になれるかどうかの検査をするから来いっと命じられます。戦況が悪化し、兵隊が足りなくなっているので、国民皆兵隊となれという論理で、名誉なことだぞっという理屈です。戸籍を元にして手続きが進められるので、本人の本籍地が検査の場所になっています。氏の場合は兵庫県です。検査は簡単で、担当医師が五体満足で結核等に罹患していないことを確認すれば合格です。これを受けて合格していると、次に、いよいよ入隊の命令が来ます。入営せよという命令です。召集令状、赤紙というやつです。
氏は帝大法学部に在籍、最初の検査に合格し、飛行場に勤労動員されていました。そこへ入営命令が来ます。こうなると、髪と爪を切って遺品とし、遺書を書いて、指定の部隊へ入隊します。これも大抵は本籍地で編成される部隊です。既に負け戦で、連れて行かれたら死ぬものだと、誰もが考えているのです。
出発前から風邪をひいていたことが理由か、口実にしたのかは判りませんが、父親が付き添っていきました。入隊の前の健康検査で、不調を肺病か何かとされ弾かれます。父親は大喜び、駅まで走ったというように伝わっています。検査は間違いだった、戻って入隊しろと言われないか心配だった等の話もあるそうです。人前では、入隊はお国の為で名誉なこととして喜ぶそぶりが求められていましたが、戦争へ出兵して帰ってこない、お国の為に死んだんだと喜んで見せないといけないという時代です。それでも、氏は医師の問診に対し病状を否定しないで入隊出来なかった点について内心忸怩たるものがあったとも書いているそうで、既に出生8室火星の働きが垣間見えるような気がします。
しかし、穿ちすぎの見方かもしれませんが、医師は、この部隊が帰ってこられないことを知っていた(はずです)。それでも、健康であれば入隊させなければならない。そこに、具合の悪そうな、医師として理屈を付けられる者がいたら、どうするでしょう。おまえ、胸が苦しくないかっ。何時からだっ。と言うところでしょうか。表向きにも、コイツは他に感染させるかも知れない、となれば、文句の付けようがありません。医者は命を救うのが仕事です。考えすぎでしょうか。
このとき、進行太陽は水瓶座宮の14度で出生進行の土星とスクエア、6室に入る直前です。長女出生で出生時の修正について触れますが、15分の遡行をすると、ハウス境界と合という形では無く、6室、健康の部屋に間違いなく入ります。そして、進行太陽は、進行月に対してトライン、調和の関係です。この病状は母親からうつされたとされています。うつされていなければ、そのまま死地に行くのですから、月の母、ナイスと言うところではないでしょうか。もしかすると悪化させたのは土星で、これが父親か。この凶座相はカイトの一環で、単なる凶事としてより、関連事項として働いているとみて良いでしょう。これらのことを一言で言うことが出来ます。運があった、です。
いずれにしても、この半年後、日本は無条件降伏をします。
後日談となりますが、この兵庫県で行われた入隊検査の日に、勤労動員されていた飛行場は空襲され、灰燼に帰します。入営の為の移動が無かったら、これで死んでいる可能性は大変に高かったでしょう。そして、入隊予定の部隊は、フィリピンに送られ、当地で全滅したとのことです。紙一重レベルの差で生き残った氏は、8室火星が示す、屈折した死そのものへの憧れをつのらす結果になったのではないかと想像するのは、穿ちすぎる見方かもしれません。
チャート的には氏の出生図は、天体配列を見ると、基本的感受点の内、1つ、火星を除いて、それ以外が、土星→冥王星→月→水星→土星というループに落ち込んでいます。感受点の働きは、次々と連鎖的に影響していくのですが、それが元に戻ってしまい、永久ループに填まることになります。これと離れているのは唯一、その火星であって、火星の掌握する欲望、実行、賭博、軍隊、軍人、武器、武具、刀剣、狩猟、競争、切断、裁断、それらの関連等々、そして8室である死、遺言、遺産、持参金、外科手術等に付いては、逡巡、堂々巡りすることは無いのです。
これからすると、氏の作品は、わたくし辺りが想像も出来ないような葛藤、逡巡の果てに出来上がってきていると考えられます。それこそ、一言一句、迷いに迷って選び抜きながら、更に校正し、倒れ伏しながら書いていたことを想像させます。
4、5 妹死去、元カノ結婚
妹の死は、経過火星土星が出生太陽と進行水星金星をオポジションで直撃しているタイミングで起こりました。腸チフスによる突然の死です。号泣したとのことです。元々、第3室、兄弟姉妹の部屋に土星で、運が薄いというか、縁が薄い傾向があります。兄弟姉妹を統括するのは水星です。その水星の経過は、出生進行の土星の上に乗っています。可哀想で涙が出そうですが、ここは非情な覚悟を持って、出生時のレクチファイを決行しなければなりません。つまり、これだけの大事件で、進行のASCに出ないはずは無いのです。21時ジャストの出生で、進行ASCは進行MCと90度を作っていますが、これは判断の対象ではありません。なぜならば変わりが無いからです。経過ノードとも座相がありますが、この程度では無いも同然です。そこで、出生時を動かしていき、出生進行感受点とハードでピッタリの座相を作る時刻を探ってみるのです。デフォルトのキー操作では、SHIHTキーを押しながら、キーボードの1と2で、出生時刻を1分ずつ前後に動かすことが出来ます。
そして次のような状況が出てきます。
20時42分に出生金星とスクエア
20時45分に出生水星とスクエア
21時14分に出生木星とスクエア、同時に経過海王星と合
22時02分に出生火星とオポジション
この操作で出てきた時刻が修正された出生時刻となります。進行ASCが作っていく座相が、出生時によって変化することを使うのです。妹が死んでしまって悲嘆に暮れるのに適当な座相はどれかというのを選ぶのです。
出生金星は、愛情の星ですから、直接の候補になります。次の水星も、兄弟姉妹を表すので候補です。木星はこのような事件に関わる主星にはならないはずです。出生火星は午後10時台で、出生時の精度評価外となります。で、残った2つの候補ですが、似かよった時刻です。わざわざ選ぶのではなく、更にイベントによる修正出生時を検証をする為の資料として取り上げることにします。
次は、アプローチされたのですが、迷っている内にサッサと他に出て来た話に取られてしまった、仕舞ったっと言う話です。時期が日にち程度に特定出来ないので、レクチファイには使えませんが、この2つのイベントが、作家としての力の元になっているという本人のコメントがあるそうですから、かなり引きずっていて、自分の中で解決出来ないでいる出来事なのだろうと考えます。
決めなければならないこと、それも肝心なことに、時間がかかる。決めかねる。そして、文章と違って、自分ではどうしようも無い事態となって、涙をのむと言うのが、行動パターンとして成立し、またそれが原動力となって物書きをする。勿論、全てをそこに昇華できないが故に、火星の示す方向へ段々と引き寄せられていくというのが、ここから見えてきます。
6 文官試験合格
大学を出るにあたり、いくつかの会社を受けたのですが、何れも良い話にはなりませんでした。計算や交渉等を一生懸命出来る健康第一の人が欲しいところに、ひ弱そうに見える物書きは、需要が無さそうです。父の意向に沿い官吏に成る為の試験を受けて、合格、役人と作家の二重生活をするようになります。さすがに役所で原稿を書いてはいられず、家で書けば、寝る時間が減ります。
職業、地位を示す10室には経過天王星が動いています。常識的で無い状態をもたらすのがこの星です。変化の星であることも間違いありません。そして、どちらを取るかといえば、それは官吏では無いのです。
7 辞表
もともと、それほど丈夫ではない氏は、役所と原稿で寝不足となっていて出勤途中の渋谷駅で線路に落ちてしまったのですが、幸いにして轢かれること無く、事なきを得ました。この事件で父親が軟化し、職業作家一本とすることを許され、依願退職をします。
チャートには10室~11室と4室~5室にオポジションの凶角が数えるほどあり、Tスクエアとなるものも3つは存在しています。このオポジションとTスクエアのヤマは如何に氏が頑張ったのかという勲章でもあります。
経歴的には箔が付きましたし、ここで頑張ったことは、後で身につき、骨や肉となるはずです。進行の木星がもう少し進めば、カイトをベースボールに導くようになります。ここが踏ん張りどころです。
8、9 見合い・結婚
依願退職から10年、進行木星が、遂にベースボールを作る位置へ来ます。天王星の度数が18度で、やや遠いのですが、効果はあったと見て良いでしょう。その昔、散々逡巡した結婚は、見せられた写真を一発で気に入り(火星ですね)、見合い、結納、結婚と続きます。ベースボールの中の月が、母から妻に変わっていくことになります。
10 長女誕生
結婚後、1年と1日で長女誕生です。第一子です。正確な出生時を元にした場合、子供や親とのチャートを比べるとタイトな合や衝が、重要なポイントで目立つことが多々あります。これを使って出生時の修正も可能です。方法は「4、5 妹死去、元カノ結婚」でやったような形で、トライしてみるのです。こちらからも、氏の午後9時の出生時を15分繰り上げて20時45分頃にしてみるのが面白そうです。
11 長男誕生
長女から3年、有形無形有言無言で求められていたはずの長男です。ハードなオポジションとトラインが目立ちます。氏の進行木星で出来ているベースボールを補完する位置、許容度としては不満が残るかも知れませんが、牡牛座宮の11度の太陽を持つ子です。場合によっては、第一子より、こちらの方が明らかに出ている可能性があります。こちらも15分ほどと、見ただけで思うのですが、出生時を動かして、確かめてみることをお勧めします。
12 グランドセクスタイル形成
1965年8月に、進行火星の度数が牡牛座宮12度域、進行木星は山羊座宮をきわめてゆっくり進みます。許容度が広めではあるものの、出生に持つカイトを、この2つの進行感受点が加わることによってグランドセクスタイルとなります。許容度をもっと狭くして、天王星を外したとしてもベースボールが間違いなくあります。長男誕生で牡牛座宮の11度に太陽を持つ直系が居るとは言え、自前で感受点を用意出来る方が意味としては強くなるのは当然です。
勿論、これらの特殊座相の形は棚ぼたがやってくるものでは無く、努力して、努力が実るものです。努力しがいがあると見えます。カイトでは1つのオポジションがあっただけですが、ベースボールでは2本、グランドセクスタイルは3本のオポジションによる緊張を処理しなければならないのです。
さらに、出生図における火星は8室にあり、座相が悪ければ(悪いのです)横死の可能性さえある感受点のみが配列から外れ、暴走する可能性を秘めていることと、座相として太陽と冥王星に対するスクエアを持つ(太火スクエア:横暴、無分別、独断、暴力沙汰、事故 火冥スクエア:残忍、苛酷、野獣性、危機的な状況)ことが、発現の方法に問題がありえること、最悪の可能性ありを示しています。空想の中、脳内だけであれば、海王星的な世界として現実側からの対処は必要ありませんが、この発現を現実世界に実現しようとすることは、危険であり、害毒にしかならないものに変化させることになります。
火星を単純に吉星凶星に分けるのであれば、凶星ということになっています。軍隊でも武器でも、存在自体が悪というものは珍しいことで、運用が良いか悪いかということに尽きます。それでも、運用は難しいもので、容易に悪い方向へ行きやすいから凶というカテゴリーに入っているのです。
カイト、ベースボール、グランドセクスタイルというような特殊な座相は、特殊であるから命名されていますし、その働きについては、単純に良いものであると勘違いされていますが、本来決まっていません。働く力の大きさを示すものであって、単純な吉とか凶という評価は出来ないのです。
このような複合座相では、吉、凶、イージィ、ディフィカルトというような二者択一でも無く、混合していて、どのように使えばうまく行って、結果としてどれだけの利益と損があるかということに行き着きます。百パーの利益とか損害というのは稀です。費用対効果の評価をより正確にすることを求められるのです。
まあ、えてして全損というのは、それなりに聞き及びますが・・・。チャートの場合の全損は、この世からの退場です。
13 自決
出生図上で独立したポジションを持つ火星、それは信管の付いた起爆可能な爆弾です。その爆弾が死の室、第8室にあります。それが生命の基本たる太陽と、冥府の王、冥王星とスクエアとなる不調和な凶座相を持つ。これは殺すか殺されるかというような凶事を暗示するというのが、占星術の法則です。少なくとも死まで行かなくても重症となるような判断は妥当です。得物は、火星ですから全ての刃があるもの、爆発物、打撃、衝撃・・・。
そして、その出生の火星に対して、進行図の火星は牡牛座宮まで移動し、出生進行の土星とオポジションとなる関係を作ります。これらの星々が関係して、ベースボールを形成します。こうなったから、もうどうしようも無いという言い方も出来ない訳ではありません。でも、そこでストップするかしないかは、自分の問題です。
右翼系活動団体というような表現をされることが多いのですが、この右翼左翼は、英国議会民主制議場の席の取り方に由来しているもので、街宣車を乗り付けるのが右翼というわけでは無いはずですが、そのように取り扱われています。まあ、それはともかく、そのような団体に関わり、或いは育てて、自衛隊を軍隊として再び立ち上がらせようという提案に、集められた隊員が、どう反応したかと言えば、国民としては安心できるものであったと言えるでしょう。そして、そのような受け入れられることの無い主張をするのが、氏の出生火星、孤立した火星のもたらしたものであると考えられます。
人の屈折した思いの数々、作家としての活動、そして国家体制に関する主義主張が結びつく危険について、これらについて精密細心に分析することが必要であろう文学の分野で、これだけの人気と名声を持つ人が気付かないはずは無いと思うのです。気付いていて、踏み込む。確信犯として行動する。その根底にあるのは何なのでしょう。でも、それらについて議論するつもりは毛頭ありません。
チャートには、火星が自分の支配する牡羊座宮にあって、他の星とはアスペクトはあるにしても、配列的に孤立している姿があります。火星が力を表そうとすると、チャートの中に行き渡るような形では無く、ため込む一方で爆発性のエネルギーが渦巻くのみ。
アスペクトから流れ出る火星のチカラ(情熱、覇気、元気)は、海王星の夢幻の世界へは理想主義となってうまく流れて成果を上げる(トライン)のですが、太陽と冥王星に向かったものは、壊す方向にしか働かない不調和の関係(スクエア)。太陽から金星までの進行は、効果が短くて長続きしない。幸運の星木星(進行)が登場しても無謀で熱狂的で賭け事の方向しか出て来ない(スクエア)。
身体の中で爆弾が成長していく。少しでも圧を下げようとして、身体を鍛えたり、武道を極めようとしてみたり、色々な活動に関与してみるが、火星の示すようなものでないと興味が湧かず、遂に進行の火星木星土星でタイトなレクトアングル(占星術基礎講座 座相10)を作る事態となる。
レクトアングルは、調停とも呼ばれ、ハード・アスペクトであるオポジションで対立する2星に対し、イージィなアスペクトを持って、対立の緩和や、対立を先行きのあるものに変える効果が期待されます。一般的に良いものとされていますが、今回対立しているものは火星と土星という、いわゆる凶星の代表です。そこへ、緩和機能とは言え、本来の働きが拡大である木星です。問題が噴出しているところへ調停が入っても、失敗して煽る事態になることがあります。そうなりやすいコンピネーションです。解決解消には、究極的には対立者のどちらか、又は両方の消滅しかあり得ないということになります。しかし、どちらも自分です。その結果が、当日の出来事なのです。