SA占星術講座 (20130623)

漫画・アニメ『バクマン。』


 現実ではなく創作によるストーリーとはいえ、登場するキャラクターについて、誕生日が設定されていることは、特段おかしなことではありません。この作品でも、主要キャラクターについては設定として誕生日が用意されています。今まで、このようなものはせいぜいサイン程度のものだろうと考え、特段入力してみるということはなかったのですが、年まで入った設定になっていて、少々日付が気になりだしました。
 事の始まりは、我が家の某占星術師です。彼女は、一度聴いた誕生日は決して忘れないという、わたくしと対極の才能を持っています。そこで、誕生日を言っておくと、何かと便利です。なにしろ、しゃべる天文暦という異名もあります。
 ある日、わたくしがレンタル店から借りてきたアニメを見ていると、大変に特徴のあるキャラクターが出ていました。たまたま、それを見て、たちまちお気に入りです。なにしろアニメに興味が無いわけではありません。大学だってその方面の制作側の勉強をしたようです。あっそれ1992年11月3日生まれというと、案の定、チャートを頭の中に書き、アスペクトを出してきます。現実では無くただの設定だよといっても、なるようになっているのよ、との御言葉。それじゃあ出て来るキャラクターの誕生日について資料を収集、日付をいうと、サインレベルでも片寄っています。いい加減に日付を決めているのだろうと思っていましたから、最初はその程度の突っ込みでした。取りあえず、主要キャラクターについて、指定の日付の感受点位置を出した表を作ってみましが、この時には、よくは見ていませんでした。せいぜい、主人公とヒロインの相性がいいかなぁ程度の観察です。
 漫画を書いて成功するという話ですので、当然、紆余曲折があります。主人公は1人では無く、原作と作画という役割分担をしたコンビです。資料を集め、とにかく出生図を作ります。今回の場合、占星術で重要となる出生時刻を決定しなければならないのですが、一応、アセンダントと太陽を一致させました。今までは一日の真ん中ということで12時を設定していましたが、レクチファイが有効では無いであろうし、太陽占星術の手法を取り入れてみました。この方法では、太陽のある星座宮を1室として扱う方法と、太陽位置をアセンダントとする方法の2つがあります。ハウスについては重視しないことと共に、若くして名を馳せる場合は上昇星が良いことが多く、太陽を据えるという方法に統一してみたのです。ストーリーを整理し、ネイタルレベルでの比較と合わせて見ますと、幾つかの偶然とは思えない占星術上の配置の合致が出てきました。


真城最高(ましろ もりたか)作画担当

 太陽は水瓶座宮、しかし水瓶座の性格は、29度という度数と共に、隣の魚座宮にいる土星、水星、金星が合である事から、大きく影響されて魚座宮的な色づけと共に、それぞれの座相の意味付けがでてきます。
  太陽、水星の合から、利発で機知のある知能
  太陽、金星の合から、温和で美術や快楽を好む
  太陽、土星の合から、健康障害や忍耐、自己訓練等の圧力があります
  水星、金星の合から、文芸や知的指向があること
  水星、土星の合から、狭量で意地悪なこと
  金星、土星の合から、愛情問題と結婚問題の抑圧
 気質を決める月は牡牛座宮で、ねばり強い努力ができます。
  月と天王星・海王星が120度(トライン、吉座相)で、風変わりな手段と方法による成功や想像力、直感力を示しています。
  月と火星、木星で、Tスクエアとなっていますから、短気で衝動的、熱狂しやすく、それでいて不用心、無頓着であり、人と争いやすい性格が表されています。
 感受点の集中具合から、かなり偏り、あるいは集中力を持ち、賭けるタイプであることが見えます。問題点となるのは土星による「制限」と、火星木星90度(スクエア、凶座相)による「過剰」です。この制限と過剰を制御することがチャートの持ち主の課題となります。鍵は土星です。過剰の制御に失敗すると、たちまち「制限」が増えてきます。本編では叔父が過労で死去していることになっていますが、同じ種を持っているといえます。

高木秋人(たかぎ あきと)原作担当

 真城と同じく太陽は水瓶座宮ですが、金星との合で、もともと社交的なところに温和で優雅な雰囲気が加わり、気遣いも優しくもてることでしょう。
 感受点はサソリ座から水瓶座に集中し、バケットタイプとなっています。人生の上では、何事に付け、鍵となるのはバケットの柄となる月です。月は自分の支配する蟹座宮にいて大きな力を発揮し、母や女性関係、大衆や大衆の支持を表し、それらが幸運の鍵になります。水瓶の水星から学習能力が高く、話を作ったり、他人の能力を見抜いてサポートできる才能があります。


亜豆美保(あずき みほ)真城のヒロイン

 高木と同じく自分が支配星である蟹座宮にいる月が柄となるバケットタイプです。正に人気商売の配置です。天秤から蠍に集中した太陽を含む6個の感受点がやる気と幸運をもたらします。天王星と海王星の合は個人的なレベルではなく世代的な動きですが、これに対して180度(オポジション、緊張状態)の月を持つというのは、小心で異常なほどの敏感さを持ち、極力目立とうとはしませんが、決めたことをやり遂げようとする強情さをも持ち合わせています。愛情を示す金星は天秤座宮でありバランスを重視します。そこへ土星の120度が入っていますから、安定度は抜群です。しかし、天王星と海王星の90度は凶角です。一風変わった並みの方法ではないことに興味を持ちますし、そこに夢を描いてしまいます。作中では、真城の作品がアニメ化したら結婚する。それまでは合わないという約束をします。並みの考えからすれば、無理だろうと思うでしょうし、一緒に頑張ればという意見も出てくるでしょう。つまり、並みの考えでは無いのです。そして、金星と木星が約4度の許容度で0度(コンジャンクション、強化)となっていて、幸運が降って湧いてくることを示します。ただし、火星と土星の凶角は事故かも知れません。
 月、金星、冥王星が根となり、土星天王星がミューチャル・リセプションですから、あまり迷うことは少なく、自分の道を歩むタイプです。


見吉香耶(みよし かや)亜豆の一番の親友

 太陽は蟹座宮で一度掴んだら離さないタイプです。月は乙女座宮で火星と同座、アクティブで体力にものをいわせることができます。土星とは180度ですが、太陽が良い位置にいますから、被害を最小限にすることができるでしょう。他の女(月)との競争とも考えられます。そして太陽(父親のような男性)に助けてもらうパターンもあります。ただし、火星と土星の180度自体は月が絡んでいますから怪我や事件に巻き込まれる危険は無視できません。
 月と水星、土星と天王星がミューチャル・リセプション、金星と冥王星が根となっていますから、決断は早く迷いは少ないタイプです。作中ではボクシングや空手が強く体育系です。


岩瀬愛子(いわせ あいこ)成績では高木のライバル、恋では美吉のライバル

 牡牛座宮の太陽ですから、わがままでガッチリ、感受性が豊かですが、一度決めた方針を守る頑固さがあります。太陽には天王星と海王星の120度があり、独創的で、豊かな表現力があります。芸術からオカルト、斬新な方面に才能があるということです。また、月は金星と火星の3星でグランド・トラインを作っています。一般的には幸運の象徴ですが、固定化する意味があり、自分で変更できないという問題点があります。愛情を示す金星は、木星のオポジションを持ち派手好みだったり浪費家、欲求不満などを示しています。高木と付き合っていると思い込んだり、明確に振られ、高木が入籍してもあきらめずにアピール行動せざるおえないことが示されています。


真城信弘(ましろ のぶひろ)川口たろう 真城最高の父の弟

 牡羊座宮の太陽で大胆にして勇敢、活力のみなぎった性格です。支配星の火星が3度の許容度で合となっていて、この性格を最大限強調しています。そして、月は水瓶座宮で海王星の凶角(90度、スクエア)であることから、新しもの好きであり、暴走気味の敏感過ぎる芸術性を持ち、その芸術性は土星と水星の120度により、少し芯から外れた方向へ発揮されます。海王星は薬物依存レベルでの嗜好の意味することが多々あります。
 座相的には重要なポイントに90度が多く見受けられ、全てについて解決には努力を要することを示しています。作中では、大変な努力の人であり、結局、過労で倒れなくなったとされています。チャートからは、過労の他に海王星の示す不摂生であったことが暗示されています。
 天体配列では火星が唯一の根で、太陽が枝に入っています。その他の感受点はループに陥っていますので、火星絡みでないことについては、悩み迷い決断できないでいることが多かったと推測されます。その中でも金星は魚座宮で座相を持ちません(ノーアスペクト)。金星の示す事項の一つである愛情問題について彼がどうして良いか判らず行動できない、または行動できない状況を作るということになります。作中では、思いを寄せていた亜豆美雪を、漫画家として売れたらプロポーズするつもりで文通をしていたのが、振られてしまいます。しかし、その後も頑張ってアニメ化にまでこぎ着けたことになっています。


亜豆美雪(あずき みゆき)亜豆美保の母にして、真城信弘の文通相手


 魚座宮の太陽です。木星と海王星でグランドトラインを作ります。関係の状況は固定されていて努力で突破できるようなもので無くなっているというのがこの座相の意味です。太陽に対して土星が合となっていますから、真城と同じように健康障害や陰気、忍耐ということが出てきますが、グランドトラインの影響から、真城の出方とは違う様相を示すことが考えられます。とはいえ、自由にならないことが多くあるでしょう。気質としては双子座宮の月で、活発な方向を持っています。しかし、支配星の水星はやはり魚座宮であり、月と90度です。水星の文書通信関係は、努力を要する方向です。また、全感受点の配置はループに落ち込んでいます。思い悩み、迷っている内に事態は思いとは違う方へ動いてしまうことになります。
 愛情を示す金星は牡羊座宮、牡羊座宮の支配星でもある情熱の星、火星と180度であり、関係の方面で気持ちと行動が一致しない、または逆に過激な手を打つことを示しています。この場合はグランドトラインの木星と90度であり、現状から動けないことが示されています。ですから、駆け落ちや転がり込むという選択は無いわけです。作中では真城信弘と両思いである状況ながら、双方共に告白すらせずに文通を続けていたことが出てきています。そして、持ち上がった縁談に応じたことになっています。

以上が分析対象である該当者の個々の状況です。


続いて相性の状況です。肝心なところで太陽と木星の良い座相が目に付くという結果が出ています。

真城最高−亜豆美保

 恋愛という点でいえば、真城の金星と亜豆の火星は水の宮、亜豆の金星と真城の火星は風の宮にあり、座相でいえば120度です。この関係は一目惚れレベルの相性です。作中では周波数が合うと表現していますが、正にそれです。そして、それぞれの太陽と互いの木星が、サイン同士でも座相でも0度と120度の関係を持っています。幸運の限りのパターンといえます。ただし、良いことだけではありません。互いの太陽と火星の関係は90度です。性格と情熱が互いにすれ違う関係です。そして、亜豆の土星は真城の太陽と合になっています。土星に乗られた方は、言ってみれば奴隷のようなものです。相性としてみれば、対等ではなく、コントローラーは亜豆ということです。ポイントとしては、真城は自身の出生図でも土星に乗られているということもあります。従って、真城にとっても出生図の状況を実現できる相手が亜豆だということになります。作中では、真城のプッツン火星による、いきなりのプロポーズに対して、結婚まで会わないというエキセントリックな条件付けでOKの返事をもらうことで、話が進みます。


真城信弘−亜豆美雪

 こちらの組み合わせでも、互いの金星と火星の関係は、0度と120度ですから、真城最高−亜豆美保の組み合わせと同じ特徴となります。しかし、それぞれの太陽と互いの木星の関係は90度ですから、幸運の星はあまりほほえんでくれません。亜豆美雪の太陽には真城信弘の土星が合となっていますので、亜豆美雪の方が従の側となります。ですから、真城信弘が、ばくち打ちにこだわらずにプロポーズすれば、即刻駆け落ちに決まったでしょうが、出生図から判るように真城信弘は、自分から動けないのですから、どうしようもありません。


高木秋人−見吉香耶

 高木の火星と見吉の金星の星座宮は山羊座宮と牡牛座宮の120度で、こちらも波長が合います。また、高木の月と見吉の太陽はかに座宮です。このパターンは結婚している仲の良いカップルによく見かけるパターンです。星座宮だけで無く、座相としても真城最高−亜豆美保の応援パターンに近いものを持っていますので、これがうまく行かないのならば、よっぽど出生図に問題を抱えているのでしょう。


その他の相性

亜豆美保−見吉香耶 亜豆月と見吉太陽が同座で意思の疎通がたやすく、友人関係としては良好。本作でよく見かける太陽と木星の吉座相もあり、永続的な関係ができている。


真城最高−見吉香耶 相性のポイントにそれほど良いものがありませんが、座相種の中で120度が多く安定な関係を持ちそうです。


高木秋人−亜豆美保 90度が多く、すれ違い型で、接点はあるものの並みの関係。


高木秋人−岩瀬 相性的にはそれほど悪くは無いが、水星絡みの90度で、合わない点での折り合いが問題。


高木秋人−蒼樹 相性の中に合が多く、同じような経験を持ち話は通じるはずだが、相性としては決定打にかける。


蒼樹−中井 意外と相性は良く平丸との相性よりポイントは高いが、中井太陽と蒼樹金星が合で太陽(中井)から一方通行。


平丸−蒼樹 それほど相性的には強いものがありませんが、平丸太陽と蒼樹木星が合で、幸運の女神様のほほえみが決定打。


平丸−吉田 太陽同士の座相は合、月のサインは同じという事から、気心がわかる相手であり、一番多い座相が120度。平丸が逃亡しても行き先が判るのはこれか。


新妻−服部雄二郎 月同士が180度の星座宮で、ライバル? 新妻太陽と服部木星が合で、良し。


 これらの占星術的な判断と本作の設定との関係は、偶然として考えられるものを遥かに超えています。ランダムな生年月日からは決してでてこないことは間違いありません。どのようにして生年月日を定めたのかは存じませんが、まるで、占星術師に誕生日を依頼したかのような結果に、かなりの驚きをおぼえます。また、依頼されたからといって、そうそううまく作れるかといえば、かなりの難問であろうと思います。相性の良い日付を出して、誕生日から人を探し出しても、その人とうまくいくなんてそうそうありません。例え架空の話だって、それらのキャラクターは、勝手に動くことがあるそうですから計算では出来なさそうな部分です。仮想の世界とはいえ、なかなか面白い結果が得られました。

 ところで、原作者の大場つむぎ 氏については本名・性別・生年月日不詳ということなのですが、有力候補があって、どうもギャグマンガの系統のその筋では有名な方ということだろうと想像されているようです。それからすると、本作の中で過労で逝去してしまった真城信弘のキャラ設定に通じる人物ということになります。そうなると太陽は獅子座宮となります。
 また、作画、小畑 健 氏は水瓶座宮の生まれとなります。チャートは作中人物と同じに太陽の上昇として作成しています。こちらからもまた、占星術的な話題も出てきますが、それはまだ別の話ということで。