F 望遠鏡の整備と調整

 望遠鏡の各部分は、高性能なものほど特別な調整や管理を必要としています。それらは高度な技術や経験を必要とするものがありますから、いたずらにやってみるものではなく、充分な調査と準備をして行うものです。ですから、先ずは良いのか悪いのか、不具合なのかを見極めることが求められます。説明書を読んでいない場合は、その分、不具合を出すと思った方が良いでしょう。
 また、三脚やピラーに経緯台や赤道儀を載せて鏡筒を付けていますから、固定されていない場合に倒してしまうと、1〜2メートル落とすことになり、大変なダメージを被ることがあります。
 多くの場合、望遠鏡は長期保管の状態です。保管状況によっては取り返しの付かない場合もあります。特にレンズに付くカビは26℃70%以上が目安です。東京や大阪では5月〜10月が警戒域です。


(1)主鏡の保守

 外観にキズがあるのは、衝撃によって何らかの問題が出ているかも知れません。見目だけの問題ではなく、性能に関わる場合もありますから、他の部分もよく調べます。対物レンズにキズやカケがあるのは、大変に目立ちますが、大きなものでなければ大抵の場合、見えや像には、それ程影響はありません。但し、そのような荒い扱いをしたことになりますから、他の部分もよく調べる必要があります。
 レンズや鏡にカビが生えていると、これも大変目立ちます。多くの場合、コーティング層を超えてガラスそのものにまで食い込んでいる場合があり、こうなってしまうと光学性能にも影響が出てきます。研磨することで回復できる場合もありますが、専門職の仕事になります。
 とにかく、触らないことです。触ってしまったら手の油が付いてカビが発生します。ホコリが付いていて気になる場合はブロアーで飛ばすだけにします。どうしてもきれいにしたい場合は、羽毛か洗いほぐした毛筆で払います。どうしようもなく汚れている場合は、ホコリを飛ばした後でベンジンか、アルコールとエーテルを半々にしたものを和紙か木綿に含ませて軽く拭きます。ただし、アルコールはバルサムを溶かしますから、これで貼り合わせたレンズに使ってはいけないとされています。もちろん、木綿に湿した程度でバルサムが溶けて流れることはありませんから、拭き方次第ということになります。バルサムを溶かさないキシレンを使ったり、殺菌目的で四塩化炭素を用いる事もあったようです。双方とも毒物ですから、使用の際は十分に注意してください。

(2)主鏡の焦点像と収差

 対物レンズや対物鏡の恒星による焦点像を調べます。高倍率をかけて焦点のデフラッションリングや焦点内外の回折輪を調べます。きれいな同心円構造になっていないのは、何らかの問題があります。調整で済むものもありますし、レンズそのものに問題があるものもあります。多くの場合は調整が必要です。
 色収差を眼視で調べる場合は、北極星を使います。北極星は眼視的には純白ですので、色収差の具合を調べるのに最適です。焦点像そのものや焦点内外の具合から補正の状態が判ります。
 反射望遠鏡では、しばしば光軸修正が必要になるものがあります。短焦点の反射型は特に光軸のズレには敏感です。

(3)接眼部と接眼鏡の保守

 接眼部はピント合わせでスムーズで微妙な動きを求められます。説明書の注意に従った操作が必要です。大抵の場合、ガタはネジによる調整で治りますが、自信を持って触れる方以外は、販売店経由でメーカーに出した方が良いでしょう。

 接眼鏡自体の色収差はあまり目立たないものですが、視野の歪曲収差や湾曲収差によって、見えが悪くなっているものもあります。これは改善しようがありません。
 目で覗くものですから、意外と汚れます。そのままにしておくと汚れが取れなくなったりカビの温床になったりしますから、取扱説明書に従った清掃が必要です。一般的には主鏡やカメラレンズの掃除と同じ要領です。

(4)架台の保守

 架台は機械装置ですので、ガタが無くスムーズに動くかどうかが問題です。そうならない場合は、何らかの問題が出ている事がほとんどです。また、三脚やピラーがしっかりと取り付けられているか等、常にチェックして慎重に扱わないといけません。精密機械という意識が必要です。

(5)付属品等の状況

 副鏡(ファインダー)が主鏡と同期しているかは天体を導入する際に大切です。遠くの物体である程度合わせて、最終的には天体そのもので合わせます。太陽観測の際は、外してしまうかカバーを掛けるようにします。何も知らずに覗くとファインダーでも失明する場合があります。
 付属品や工具が揃っているか、無くなっていないかは常に調べ、無ければ困るものですから補充しておきます。