E 望遠鏡の光学の基礎

(1) 基本定数 焦点距離 f[mm]

 凹面反射鏡や両凸レンズ(単体)では、焦点距離(しょうてんきょり)を測るのはそれ程難しくありません。しかし、凹レンズや凸面鏡では光が実際に集まる焦点を見つけられませんし、何枚ものレンズを組み合わせて厚くなった光学系では、どこを基準にしたら良いのかが判らなくなります。この為、レンズ系の対物側を前として、レンズ系の前後を区別し、前または後ろから入った光がどこで集まるのかを問題にします。前側から入った平行光線がレンズ系を通過して、後ろ側一点に集まるのが、凸レンズ系の焦点ですが、前側になる場合は凹レンズであり、焦点距離を負として区別します。レンズ群の焦点に集まる光を1枚の曲面(後側主要面、主面)で集めたと考えて光路を作ります。この曲面と光軸の交点を主点(後側主点)と呼びます。ここから焦点までの距離を後側焦点距離とします。望遠鏡の対物鏡では一般に後側焦点距離が問題となります。後ろから入った光についての焦点距離は前側焦点距離であり、その主点は前側主点になります。対称な形をした光学系でなければ、主点位置も焦点距離も前後で違うことが当たり前です。

(2) 基本定数 有効口径 D[cm、mm]

 主鏡に入った光が全て焦点に集まっていれば、主鏡の直径が口径になります。しかし、絞りやその他の理由で焦点に集まる光が絞られている場合は、実際に使われている口径を有効口径(ゆうこうこうけい)として表示します。メーカーによってはガラス材そのもの径を口径と称して型番に使っているところもありますから、レンズや鏡を保持しているセルの有効径を計って、有効口径とします。カメラ用レンズでは周辺光量を確保するために前玉を大きくしていることが多く、前玉の直径を測って口径とすることが出来ません。このような場合はf焦点距離とF数から有効口径を計算します。

(3) 基本定数 口径比(F数) F8.0 、 8.0/f 、 f:8.0 (単位無し)

 主鏡が大きくなれば、集める光の量は多くなりますから、その直径に比例して像は明るくなります。焦点距離については焦点距離と像の明るさは反比例します。焦点距離が長くなると像がその分、大きくなるからです。そこで有効径と焦点距離の比率から像の明るさを決めることが出来ます。これが口径比(こうけいひ)、またはF数(えふすう)と呼びます。カメラレンズではFの後に口径比の数字を入れて表すのが普通です。この数値は焦点距離を有効径で割った値です。計算する際は長さの単位を合わせてください。F数が大きくなると像は暗くなります。口径比が同じであれば焦点距離や有効径が違っていても同じ明るさの像を作ります。口径比を小さく(F数を明るく)する為には軸外光線に対する補正をしっかり行う必要があり、必然的に高度な設計による高級な製品となるので、価格に跳ね返ってきます。
 ただし、像の明るさを示す口径比は光学系の吸収や反射率を考慮していないことがほとんどで、焦点距離と有効径から計算しただけの場合は、厳密に同じ明るさとならずに、カメラの露出が足りなくなってしまうこともあります。