日食と月食

 日蝕は、太陽が月によって隠される現象です。これに対して月蝕は、月が地球の影にはいって太陽から照らされなくなる現象です。したがって日蝕は必ず新月であり、月蝕は満月の時に起こります。しかし新月や満月の時に、必ずしも日蝕や月蝕にならないのは、月の地球を巡る軌道面が、地球の太陽をめぐる軌道面(黄道面)に対して約5°ほど傾いているためです。
 条件としては、月の影が地球に当たるのと、地球の影に月が入るのでは、月の位置からすると影に入るほうが可能性が低くなります。地球の影の大きさの方が小さいのです。この為、日蝕の起こらない年はありませんが、月蝕のない年はあります。ところが、月蝕の方が数は少なくなりますが、月蝕は地球の半球から見ることが出来ます。これに対して、日蝕は影の落ちる特定の地方しか見ることが出来ません。その為に、特定の場所にいれば日蝕の方が珍しくなります。
 日蝕には皆既食と金環食があります。太陽の大きさは近日点遠日点でそれほど違いはありませんが、月は距離が大きく変化しますので見かけの大きさがかなり変わります。月が見かけ上太陽よりも大きい場合が皆既食、その逆が金環蝕になります。
 観測が地上と可視光に限られていた時代は、皆既食の際の太陽の周縁部や彩層やコロナの構造を研究することや、太陽周辺に見える恒星の正確な位置観測によるアインシュタイン効果の証明にとって限られた機会でした。この為、各国が大規模な観測団を各地に派遣した歴史もあります。
 学術的な位置づけは下がったとはいえ、これらの現象の芸術的価値が損なわれたわけではありません。その魅力にとりつかれ、皆既食を追う人も出るくらいの荘厳な現象です。