マウナチャリ山ケロ丸天文台の歴史 赤道儀設置


望遠鏡架台 2007年11月

 予算で一番注ぎ込みたいのが架台です。しかし、予算のかなりの部分がそれよりも下の部分と囲いに取られています。一般的には鏡筒にお金を注ぎたい方が普通のようで、かなりの価格がつけられた鏡筒が品薄になるほど売れるようです。しかし、我が家の財政では、そんな出費は無理です。でもカメラの超望遠レンズの価格にはもっと凄いモノがあったりします。眼視用にすると役に立たないのですが・・・。まあ、足りない予算で起こる現象が悲喜こもごもの事件を巻き起こします。

  望遠鏡架台第一節 機種選定(起)
 架台の自作は最初から諦めています。作るのであるならば、作るための道具が必要です。溶接の道具、旋盤、フライス盤・・・そんなものを使える環境にあるのならば、勿論ですが作ります。それから材料、これも馬鹿になりません。要求されるレベルでいえば、そんなものを百万くらいで揃えることは不可能でないにしろ、掛かる時間だってそれなりです。東京や大阪ならば、それこそ直ぐに手に入るもので何とか組んでいけるでしょうが、こちらでは無理です。まして、ウオームホイールまで作るとなると、設備の整った会社が一つ欲しくなります。
 そこで、百万位で既製品が何とかならないだろうか。どう見積もっても鏡筒の重さは30キロを超え40キロに近づきそうです。それを載せることの出来る赤道儀の値段を調べると嫌になってしまいます。わたくしは結構ブランド志向で、カメラはニコン、望遠鏡はタカハシが欲しいタイプだったのです。お金が足りなくて最初のカメラはペンタックスでしたが、今では軽度のニコン中毒です。軽度というのは、レンズがシグマやトキナーですから。しかし、望遠鏡についてはある時期からタカハシ離れを起こしています。EM100より後の望遠鏡の造り、コンセプトが変わったこと、直販を売りにしていたのに販売店に卸すようになったことが主な原因です。しかし、そのタカハシの値段もチェックしておかないといけません。ただし、総額200万近い金額が掛かることから、車庫の見積もりで笑いものにした業者と同じ扱いでしかありません。
 国内各社を全て調べた訳ではありませんが、笑いものの価格を提示するところがほとんどです。それだけ取らないと商売が出来ないような状況なのかも知れません。そして、当然、輸入品にも目がいきます。米国ロスマンディー社の赤道儀も高精度を売りにしています。ここの売りはそれだけではありません。自動導入装置はその装置だけで使用することの出来るものでした。国内の機械ではパソコンとつなぐのが当たり前のように考えて作られ売られています。Vixenの自動導入装置スカイセンサーは、それ程優秀だったと言えます。スカイセンサーが持つ機能を、モータードライブに組み込まれているワンチップマイコンでは真似が出来なかったのです。そのロスマンディー社が用意した導入装置、ジェミニは価格も高いですが、明らかにスカイセンサーの上を行くものです。望遠鏡を操作するのに、横に置いたパソコンをコチョコチョといじるのではなく、付属のコントローラーで機能を呼び出して動かせるのは次元の異なる、ある意味、当たり前の操作です。そして、最上位機種タイタンの搭載重量は45キロ、価格は予算内です。ほぼ決まりでした。

  望遠鏡架台第二節 急転直下(承)
 これに価格的に競合するのがユーハン工業のU−150とタカハシのNJP、ちょっと無理をしてEM−400でした。但しこちらはカタログ搭載重量30キロです。予定の鏡筒が乗らないのではダメです。ロスマンディー社タイタンに決まりです。決まれば発注ですが、鏡筒を自作という線からすると、鏡筒の重量が鍵となります。そこで、試しの鏡筒工作をした上で、紙管を使う事に決定し、鏡やセルの注文が先となりました。この線は遅れに遅れて、架台の方は見切り発車することになります。しかし、紆余曲折が巻き起こります。
 円安が進行していて、あぶねえなと思っていたらも案の定、価格改定がありました。タイタンの本体価格は6万円も上がったのです。その他の部品の価格も同様です。予算オーバーです。悩んだ末に取った行動は、ユーハン工業に直接電話をするということでした。これだけアルミ削りだしで精度を売りに出している機械が搭載限界30キロのはずが無かろうというのがハラでした。会社として宣伝を入れていましたので、てっきり社長さんが好きでやっているのかと思っていました。電話を掛けると社長さんが出て、望遠鏡のことなら工場長の秋田さん(故人)で、全て任せていると言われ回していただきました。案の定、担当の工場長、秋田さんの弁に寄れば50キロでも60キロでも大丈夫だという、少々軽口も入った説明でした。移動用の簡単組み立てプラケットでは最大30キロだが固定プラケットにすればいくらでも載るということでした。急転直下ユーハン工業U−150に決定した瞬間でした。タカハシのアルミダイカストのマウントは、公称の搭載重量になる前に動きが悪くなり、また、氷点下でも性能が落ちることが判っていましたので、エントリーしただけでした。
 さて、U−150には2系統の自動導入装置が用意されていました。片方がジェミニタイプのもので、もう一つがパソコンによるコントロール式でした。希望はジェミニタイプでしたが、話に寄ればパルス抜けを起こして精度が落ちると言うことでした。それで勧めに従ってパソコンによるコントロール式を注文しました。

  望遠鏡架台第三節 変転(転)
 ついでにそのパソコンによるコントロール式導入装置を作っているところでアリガタアリミゾも注文しました。ここからがアヤの付きだしです。いえ、赤道儀にでは無くそのモータードライブにです。先払いで注文してから、言われた納期になっても梨のつぶてでしたので問い合わせると、忘れていたようです。改めて納期が指定されたのですが、それが来る直前に今度は運送の途中のトラブルで傷が付いてしまったという連絡。それで、遅れついでにアリガタの追加をしたら、追加分を遅れたので値引きするというアリガタい申し出、でも、これも製品が届いて請求書を見るとすっかり忘れてしまっている。問い合わせるとそんなこと言いましたっけ。あげくに納品書に領収の文字の赤いハンコを押してこれが領収書だと主張。あのね5万円以上も払っているんだよ。収入印紙を知らないのね。今までこれで通っているんかいな。間違いなくコイツは、機械加工についてはうんちくを持っているのだろうが、常識も商取引の方法も知らない問題アリの「業者」だと確信しましたので、導入装置の方もキャンセルさせていただきました。これは病気とも言うべきもので、特定の方面では異常な才能を示すのですが、一般社会での生活については問題があるという手のものであることは明らかです。天文屋さんにはわたくしも含めて普通より変わった人物が多いのですが、そんなことよりも、こちらが被害を受けるかどうかで判断できます。この手の装置は、必ずメンテナンスが必要になります。その時に、この業者では信頼できません。問題の根本はそこにあります。言った言わないのレベルで、客を客とは思わない大名商売をしているものは、どんなに良い物を作っていても取り引きはしたくありません。普通はそんな者共は淘汰されてしまうのですが天文業界は縮小の一途ですから、こんな奴でも仕事があるのでしょう。

  望遠鏡架台第4節 設置(結)
 11月初旬、赤道儀、ピラーが到着しました。送った後で、ユーハン工業から電話が来ました。何事かと思いましたが、何でも導入装置のマニュアルを入れ忘れたとか。まあ、着いたマニュアルを見たら、これでマニュアルかいと思いましたが、要は読まなくても判るようなものでないといけないのです。といっても、ごく基本的な操作については書いて欲しいと思います。しかし、ユーハンさんはパッキンに埋もれていて入れ忘れただけですので、大したことではないのですが、気がついたところで焦ったでしょうねぇ。




ピラーはトラックのユニックで降ろしたそうです。確かに、1人では持てないほどの重さと大きさです。

 早速設置したいのですが、ベース・プレートをケミカル・アンカーで固定するために、穴あけが必要です。そして、その穴の位置は、ビシッと決めないと問題が起こります。というのは、入れる鏡筒の大きさが、結構ギリギリで、ちゃんと中心に合わないとドームに擦る、当たる、動かせないということが有り得るのです。錘で垂線を出しながら慎重に不動点位置を出します。指さし声だし確認です。一度測ってOKにはなりません。ドームの回転部分だって、ある範囲内で動くのですから。ドームのベースリングを基本にして位置を出しました。誤差は2mm程度の範囲です。
 続いて穴あけです。太いので手持ちの機械では無理です。基礎の施工業者さんに頼むと二つ返事でしたが、社長、約束した当日のことを忘れていて、夕方部下を寄越しました。当日は朝からドームの中の物品の全てを出していました。穴あけは順調でしたが、持ってきたコンプレッサーが不調で粉を充分吹き飛ばせなかったというアクシデントと、6本の内、1本が中の鉄筋に当たってしまいました。こちらは入れるアンカーボルトを短くすることで対応です。何、大したことではありません。ただ、暗くなってきてしまいましたので、掃除をしてから車庫上に出していた一切合切を放り込んで鍵を閉めます。泥棒が出たら嫌ですからね。


直径60センチのベースプレートと穴開け用採寸

 ベースプレートの取り付けは次の日、明るくなってから始めました。あまり早いと、アンカーボルトを叩くのがうるさいですから。とにかくこれで固定して、ピラーを立ち上げ、赤道儀を組みました。持ち運びにも便利なように作ったというのですが、この重さは何?。赤緯体を分離できなければ、持てないぜ等と思いながら、組みました。
 更にEM−100に載せていた搭載重量倍オーバーの鏡筒を載せてみました。


車庫屋上に機材を出して作業です。

EM−100とU−150の比較

U−150取り付け完了


立派な目盛り環


極軸調整部分


取りあえず16、10、8センチ鏡筒の搭載

外からの眺め

 配線をして架台の設置完了です。機能は申し分ありません。ちゃんと動いています。しっかり働いています。後は支払いなのですが、12月の半ばに請求書を早く寄越さんかいと電話連絡を入れたのですが、結局年を越してしまいました。2年ほど請求を忘れてくれたらもう一台注文するのですが・・・
 続報 結局3月に入って我が家の財務大臣がこちらから電話を入れ請求書を送るように求めて、やっと送ってきました。しかし、振り込んでから1週間が経ち領収書を送ってきません。本当にのんびりした会社です。我が家の喋る天文暦が領収書を要求する電話を入れたようですが、こちらも待て続報というところでしょうか。
 商売じゃないというスタンスなのか。金のことはきっちりしておかないとロクな事はないと思うのですが、なあなあで済ましていられるのも運の良い内です。お勧めのモータードライブの作り手と同じ結構なドンブリ勘定で、物作りにこだわる人に多いタイプなのかも知れません。もしかすると、そもそも眼中にないのかも知れません。まあ、このご時世で、好きなことが出来るのは実に幸運なことです。
 続々報 春分の日を含む4日間の旅行から帰ってきたら、領収書が届いてました。これでやっと終了です。

 補記1 お勧めのモータードライブを作っていたところは、いつの間にかWebPageが消滅していて、ROM内データ(天体位置)の誤りや動作の改善をお願いしようと思っていたのですが、どうしようもありませんでした。例えばM41の位置が半度ほどずれていて、手動で補正すると、その後補正分がズレていきます。補正したズレ分が溜まっていくのです。この点は、新しいモータードライブ装置の宣伝が新たに付け加わっていて、早速、導入させていただきました。
 補記2 ユーハン工業株式会社という名称で外国や外国言語を想像する方が多いのではないかと想像しますが、この名称は社長(代表取締役)の姓から名付けたものです。また、当初、社長に専務の2人で、後は下請けというような超小規模なものから、社員10人くらいの家内制手工業みたいな会社と思っていたら、とんでもない。従業員数80名を揃え、舞鶴にも工場を持ち、超優良な一流企業である某社と創業以来取引をしている優良企業です。勘違いの原因は、電話を掛けたら社長さんが出たからなんですが・・・。で、そのまま、舞鶴工場の秋田さんに転送されお話を伺いました。社長さんから、好きなことをやって良いと言われ超高精度な赤道儀や経緯台を作成していたのが秋田工場長さんだったのです。その後、新しいドーム無しの据え付け型赤道儀を開発したと言う知らせがあったころです。子午線超えのときの鏡筒反転を回避する赤道儀を提案しよう考えていたので、連絡を取ろうかと思っていていると、体調を崩してそのまま・・と聞き、暗然となりました、ご冥福をお祈り致します。
 追補記 ユーハン工業株式会社での望遠鏡製作は、他の方が肩代わりできるようなものでは無く、ひとえに工場長の類い希な才覚によっていたワンオフものでしたで、取扱いが終了するのは致し方ありません。小さな部品の修理は出来ても、大きく損壊したら諦めるしかありません。