デジタルカメラ

天体用改造の評価

 D70の赤外カットフィルター(色補正フィルター+ローパスフィルター)を外すと、赤から赤外にかけての感度が映像素子の本来の感度を持つようになります。しかし、ピントの位置はフィルターの厚みを折り込んでいますし、映像素子を露出させるとゴミ等の付着の問題も出ます。ライブビューのないD70はハナからピント合わせに苦労していました。そこで、星雲の赤の重要な要素であるHαを透過させる赤外カットフィルターに交換することで、アクシデント防止と操作性を維持する方法があります。素人に出来ないことではないのですが、先達と人柱の情報から、この改造はプロに頼むのが安全です。光映舎に連絡を取り改造を依頼しました。

 改造の済んだD70が、一般撮影に使えるかどうか、そしてどれほどの能力を持つか。先ず、シャッターを押してみました。

 ホワイトバランスをオートで撮ると、かなり赤く写っています。ただでさえ赤が飽和しやすいデジタルカメラですので、交換したフィルターが青色に見えているくらいですので当然です。空が紫色です。要はC4かC8位のフィルターを付けると良いのでしょう。しかし、デジタルはフィルターなんか要りません。ホワイトバランスを調整したり。RAWで撮っておいて後で調整ということも出来ます。試しに現像ソフトでホワイトバランスを調整してみました。

 すると、フィルターの交換なんか無かったかのような写りです。厳密に細かく見れば、まだ赤がおかしいところがありますが、赤外域に近いところでの感度アップです。標準でこのあたりの感度を残している富士フイルムのデジイチでは、素材によって色が見た目と変わる物があると聞いていますので、これだけで済んでいるのは大変に優秀だと考えます。

 さて、問題はどれだけ写りますかという勝負ですが、ビフォー・アフターを見せるのが一番なのは判っています。しかし、天候も思わしくなく比較材料を用意する前に改造に出してしまいました。そこで、D300で撮ったものと比較評価をしましょう。光学系は同じ口径25センチ、焦点距離1250mmニュートン反射です。

機種NIKON D300
露出時間250.2秒
ISO感度設定: ISO 800
撮影日時,2008/07/29 22:33:10


機種NIKON D70
露出時間62.1秒
ISO感度設定: ISO 800
撮影日時,2008/08/31 19:14:07

 D300では4分以上も露出をかけたのですが、明るい部分しかよく判りませんでした。そこで、現像ソフトでコントラストをギリギリまで上げ、色も強調して星雲部分を出しました。この結果、星雲が明らかになっていますが、ざらざらのあまり美しくない映像となっています。これに対して改造D70は、その四分の一の露出で、撮影直後のJpeg画像で星雲が写っている様子を確認できました。階調もそれなりに豊かで、大きく広がった星雲が写っています。現像ソフトでガリガリ映像を作り出さなくても良い状態です。撮影状態はそれ程良い物では無く、北緯43土に近い場所で、M8は南に低く市街地の明かりを受けています。
 星雲の主たる色であるHα領域の暗赤色についての感度は、比較しようもないほどの差が出ています。これに対して星は露出時間なりの写り方をしています。改造費用は無駄ではなかったことがこれで判りました。