mS's Ast. ハーモニック

 占星術の方法として特定のホロスコープから別のホロスコープや図を導いて、判断の助けにしようというテクニックが幾つか紹介されています。この内、ここではハーモニック(調波)と総称されるテクニックについてちょっとまとめてみます。

 このテクニックの背景は古くからあるとされ、ヒンズーのバルガが良く引き合いに出されます(とすれば、誰の許可だとか言うような面倒なことを考えなくても済みますから、皆さんも安心して勉強して下さい)。

 ジョン・アディ氏によってまとめられたハーモニックは、各々の自然数とその意味を敷衍して、春分点からの角度を自然数倍して計算します。使用した数をハーモニック数と呼びHN=5と言うように表します。最初の判断としては、位置の度数が星座宮の最初と終わり、つまり0度と29度、それから感受点間の座相0度、90度、180度のタイトなアスペクトを持つことを特徴として捉え、各ハーモ数の意味と特徴となった感受点から、意味を引き出します。0度、90度、180度の座相は、ディフィカルトな座相ですが。ここでは特徴を捉えるために使い座相としての意味は問題にしません。感受点はその組み合わせで、善し悪しを判断します。

 次に石川源晃氏による分割調波は、ハーモニック数として各感受点の春分点からの度数を360で割り、1を足した数、つまり1から2未満を使います。計算元の感受点に対する出生図以上の分析を目的としていて、チャートの状況、特に120度のアスペクトに注目します。また、度数域から状況を捕まえることもするようです。

 自然数に限らない点では石川氏の分割調波と同じですが、計算方法が異なるグレイグの方法があります。この方法は感受点の春分点からの度数で360を割ることによりハーモ数を導きチャートを作ります。この方式はプラネタリハーモニック(PH)と呼ばれます。

 占星術の原則は感受点、星座宮、座相、ハウスの4つです。そしてこれらを組み合わせた法則もありますが、4つのどれを基本にしたものなのかは、押さえておかなければならないでしょう。ところで、以上3つの調波の方法は、感受点の度数に、ある数をかけて、新しい位置を出すという手です。つまり感受点の位置、つまり星座宮に関する手です。判断の際は座相も考慮しますが、基本的には星座宮に関係したテクニックです。つまり、ハーモニックと言う手段は、星座宮による法則に含まれるものといえましょう。

 アディによるハーモニックは何のための方法かというと、統計的に占星術を扱い、占星術に科学的方法を用いて論議しようとした方法です。これを持って、占星術、ひいては占星学が科学であり学問であると主張したい人が多くいます。しかし、誠に残念ながら、それを検証するための基礎資料はゴーグランの先妻が著作権利を主張して表に出ませんので、科学的である論拠としてのゴーグラン資料は現在は意味がありません。
 また、その資料を使用したとされるアディのハーモの研究も、解析結果しか報告されていませんので、統計的な処理についてすら、我々が逐一検討するわけには行かないのです。この点に目を背けて、科学等とは言えません。

 ここで忘れて欲しくないことですが、科学の中の世界でしたら、統計的な処理で事象Aが起こる可能性が今、何パーセントと言う結果で良いのですが、占いの世界では、どうでしょうか。例えば降水確率で考えてみましょう。明日、降水確率が50%だったら、傘を持っていこうとする人がかなりいるでしょう。しかし、10%であれば、ほとんどの人は持っていかないでしょう。気象庁としては、蓄積された気象データの中から、この状態で過去にどうだったかという統計的な値を発表するしかないのです。しかし、降水確率が10%である時は、雨に降られる可能性が10回に1回あるのですから、慎重な人であれば傘を持つでしょう。
 そして、占いは、10回の内、何回うまく行くかを考えるだけではなく、今日雨に降られるのか降られないのかと言う二者択一も扱うのですから、科学的な方法は、常識の範囲を広げる意味はあるにしろ、それで全てが済んでしまうわけではありません。科学的な解析が不必要であるとは思いませんが、統計の数字には魔力がありますから、それを扱う場合は、細心かつ慎重さが必要です。

 彼氏が出来る、彼女が現れる、別れる、結婚する、離婚する、病気する、、、これら人生の出来事と天空の感受点を結びつけるのが、出生占星術です。現在、科学と呼ばれる部門は、数式と密接な関係を持っていて、数式で表せるものを扱うのに実にパワーがあります。ですから、占星術の科学的研究という奴は、感受点状態の数量化と、人生その他の現象の数量化の上で成り立つものです。
 ちょっと考えただけでも複雑さに圧倒されますね。で、フラクタルやカオスと言う新手の手法が出てきていますが、要は、これらは事象の数量化の技術ですから、何らかのアプローチには成ると思いますが、人生をどう数量化するかの科学的アプローチ等とまじめに考えている人がいたら、かなりの重傷の科学教信奉者と言えると思います。

 さて、本題に戻って、アディハーモですが、各調波のチャート分析するに、特徴となる感受点を抜き出し、調波数と感受点組み合わせを重要視します。その際に座相を考慮しない、0度90度180度は感受点組み合わせの判断基準とするのだと言っています。つまりこれは星座宮の活動、不動、柔軟の分類をしているのですが、他の部分ではコンジャンクションは強力で90度180度は弱いなどと表現しているところもありますので、座相という見方を使っていないわけではありません。
 特徴となる感受点の抜き出し方法ですが、先ず各天体の度数が0、1、29である場合が取り上げられます。次に0、90、180度のタイトな座相(許容度3度)を持つ感受点を取り上げます。また、特徴としてはCFMNの4つの分類が行われます。この分類は星座宮のCFM分類とは違いますから注意して下さい。活動宮0度を中心に±10度の範囲をC、不動宮0度を中心に±10度をF、柔軟宮0度を中心に±10度をM、その他の部分をNとします。その中でもCの分類を重要視します。(この部分の表示は、v2.1では追加されていませんが、極めて近い内に公式訂正します。)

 アディによれば最も重要なハーモ数は5とされています。5と言う数字の意味に「人生の目的」を割り当てたわけです。
 ハーモ5のチャートそのものと共に出生図も判断の対象になります。ハーモ5に対して人生の全てが凝縮されている出生図を比較することは当然でもあります。
 勿論、他のハーモ数も見るわけですが、その他に、満年齢とハーモ数が関わっていると言う考え方もあり、例えばハーモ24で結婚を暗示するような配置があれば、24才でおめでとうになると考えます。

 ところで、各ハーモと人生の出来事について、統計的なデータが出ているかというと、出ていません。年齢ハーモで、木星とASCが関わるのは人生のチャンスと言われていますが、一体、どの程度の頻度でチャンスなるものが来ているのか、幾つかの当たった後講釈の例があるだけですから、これらについては、皆さんの研究が必要かと思います。

 ハーモニックの手法については、「調波・占星学入門」でそれなりに詳しく述べられています。内容について逐一チェックすれば、間違いも出てきますが、それはさておいて、mSに新追加のハーモニックKに付いて、述べたいと思います。
 アディハーモは、掛け算でハーモニック位置を算出します。この為、高いハーモでは誤差が拡大されて使えなくなってきます。最も精度を要求されるASCでは1度の精度を出すために時間で4分ほどの正確さが必要です。誤差が出生図で1度あれば、ハーモ5(HN=5)では5度の違いになってきます。星座宮が違ってくることも考えられますし、特徴として0、90、180度の座相(HN=4の座相)を使うのですが、許容度を3度程度に狭く取るのが普通ですから、この場合のASCは使いものにならないことになります。更に、アディが使うハーモはHM=5が最低ですからASCが使えるのは出生時が秒まで判明している例だけになってしまいます。これを逆手にとって出生時の推定を行うという考えもありますが、手段としては感度が良すぎて、それこそ当たるも八卦になってしまいます。まして、そもそもの目的であった統計的な結果を出すことは困難なことです。
 次に、ナバムサとして計算例が紹介されていますが、ヒンズーのバルガはナバムサだけではなく、ハーモ数で言うと、1〜12、16、30、60、300の16種があって、ナバムサはその中のHN=9に当たります。人間の目の分解能は角度で約1分、つまり1度の60分の1以下のものは判別が付かないので、HN=300の1星座宮が6分角に相当すると言うような、とんでもないものまであることになります。
 倍数計算によって変換された位置を出すことに、初めから問題があったのですから、計算という考え方ではなく、位置そのものに変換後の位置と1対1の対応を付けることにすれば、精度の問題は難無く解決します。
 さて、どの様にすればよいのかですが、1星座宮30度を指定のハーモ数で分割し、分割された部分を順に牡羊から割り当てていくのは、掛け算方式と同じになるのですが、変換後の星座宮内の度数の評価が違ってきます。つまり、HM=9の分割では、分割された黄道上で最初に出てくる星座宮は変換前の牡羊座宮0度から牡牛座宮10度の中に変換後の12星座宮が入っていますが、それぞれの星座宮の0度から3度20分に充当します。2番目に出てくる星座宮は変換前の牡牛座宮の10度から双子座宮の20度までのサイクルになりますが、そこは各々の星座宮の3度20分から6度40分に充当します。
 つまり、分割された小さなセクターをカードのようにして黄道に並べ替えていく事になります。

 この方式では、掛け算方式と変換後の星座宮に変わりはありませんが、星座宮内の度数が違ってきます。また、現在、統計的にと言うような、おおごとではありませんが、評価している最中なのですが、通常のアスペクトを使って特徴を捉えるのが良いようです。また、使用するハーモ数は1から12で星座宮とアスペクトで各感受点の特徴を更に詳しく見る方針がよいようです。

 何事にも絶対というのは珍しいことで、条件次第ですから、このハーモKがアディハーモより正しいとか優れているなどと考えると、それは間違いです。方法の1つとして捉えるのが正当かと思います。
 ハーモニックを扱う際を含めて、新しいテクニックを使う場合は、十分に注意すべき点があります。特に、新しい図を書いてしまう方法は、出生図では有り得ない筈の判断をしてしまう場合があります。出生図で読みとりにくい灰色の部分をあぶりだしてはっきりさせようというのがこの手のテクニックなのですから、出生図を基にしない、ハーモニックだけを取り上げての判断は本末転倒です。
 また、占星術の科学に期待する人は、科学の研究の帰結としての「技術」を期待しています。つまり誰でも蛍光灯のスイッチによって付けたり消したり出来るように、占星術が出来るようになると・・・。しかし、占星術を使っていけばいくほど技術的な点への依存よりは名人芸の方へ傾いていきます。これが、コンピューターで占星術の判断が機械的に最後まで出来ない理由なのです。ある程度までは行くのですが、そのある程度からが不可能領域に突入するわけです。

 ところで、整数倍、或いは整数型の位置入れ替えとはちょっと趣の違う分割が、石川源晃氏による分割調波です。氏自身はアディ調波の延長線上という表現をして、アディからの承認をもらっていることを強調するあまり、それ以上の事は述べておりませんが、良く考えれば、分割調波というのはアディ調波とは、これもまた、根本から違うものです。独自の方法といえます。と言うのは、アディ調波による調波図は、無限の量が考えられます。つまり理論的には正整数の数だけ調波を考えることが出来るのです。ところが、分割調波は、各感受点に1つです。mSで使える感受点は24ポイントですから、分割調波は24枚しかないのです。
 無限にあるチャートから何か言えと言っても難しいですし、後講釈が簡単に、そして、未来に対してそう有効な方法とはならないでしょう。分割調波はこの点、実に単純です。
 出生図の木星に隠された分析上のポイントは通常の十感受点(太陽から冥王星まで)とASC、MCの12個で考えれば、12個のポイントがそれぞれ計算されて、新しいチャートになります。出来たチャートは、出生図の木星の一歩下がったレベルを見るためのものです。ここで、それらの感受点の新しい位置の情報を、位置する星座宮の分析、感受点と星座宮の関係、座相の3柱で調べるのです。石川源晃氏によれば、特にグランド・トラインに注目するとのことです。許容度は狭いほど良いですので、3度が上限でしょう。わたくしは1から1.5度程度にしていることが多いです。
 各々の分割調波図を別々に使用しても良いのですが、折角、分析用の新しい感受点位置を手に入れたのですから、全体を総合的に見ることも必要です。24の感受点を取り扱う際に、各々の感受点の特性を示す一歩下がったレベルのポイントは24×24=576個あります。これがmSでは最大です。主要十感受点にASCとMCを加えると12×12=144個です。数としては多い方ではないと思いますが、いっぺんにチャートにと言う数ではありません。で、黄道360度の中で、144なり576のポイントがどの様に配置されているかを、分割調波のテクニックでポイントと見るところを、一発で表示するのがmSの分割調波(DH.EXE)です。
 分割調波では各星座宮の度数を重要視します。特定の度数に感受点が多いと、それはその人の特徴となる=敏感な度数となります。

 この「一歩下がったレベル」の感受点は出生図からのものですので、出生図から作られる進行図、その時の経過図を重ね合わせて、判断に役立てることが出来ます。