SGSmS's A. −−−天体

SGSmS's A. 048 −−−天体などに付いて

 占星術で使う星にも、色々ありますから、分類して整理してみましょう。
 地球そのものに関わる感受点として、ASCやMC、DSC、IC、EP、V、AVなどがあります。其処に天体があるわけではないので、仮想的なポイントになるのですが、重要視されます。また、ハウスも地球そのものに関係したシステムであると考えることが出来ます。
 地球に最も近い天体として月があります。月は地球の回りを巡る衛星で、地球と月の距離は、地球の直径の約30倍です。そして、月の質量は、地球の約80分の1です。地球と月で「地球系」と言う組織になっています。これに分類される感受点として月の昇交点(ノード)と降交点、遠地点(リリス)があります。
 また、リリス或いはリリトの名で第2の月が紹介されていますが、発見(?)以降、一度の観測もなく、確認されないまま、軌道要素が計算され天文暦まで作られて紹介されてしまっています。今、その軌道要素で計算すると、その天体は地球の勢力圏(引力の影響する範囲)の外にあるので、他の惑星の影響で地球を巡る軌道にいられないことが判っています。
 地球系は太陽の回りを巡っています。地球と太陽の距離は、地球と月の距離の約390倍です。太陽の質量は、地球の約33万倍もあります。太陽を巡る惑星等の全体を太陽系と呼んでいますが、太陽は事実上、太陽系の中心となっています。惑星の中で最も大きい木星でも、太陽の千分の1しかないのです。
 太陽系の惑星で、昔から使われていた天体として、水星、金星、火星、木星、土星の5つがあります。観測技術の発達に従って天王星、海王星、冥王星が発見され、更に、小惑星等をも使うようになってきています。この内、水星と金星を地球より内側を回っていることから内惑星、火星以降を外惑星と言うように呼ぶことがあります。またも地球を代表とする水星、金星、火星の岩石中心の地球型惑星、その他の気体中心の木星型惑星という分類もあります。
 小惑星は惑星と呼べる大きさではないために名付けられています。軌道は火星と木星の間と説明されますが、きれいな円軌道ではないし、質量も小さいので、木星等の影響で大きく軌道が変化して行きます。

 Stargazerでは小惑星としてセレス、パラス、ジュノー、ベスタ、キローン、1992QB1(ペルセポネ)の6つを採用しています。SGSv2以降、SGSmSでは1993FW(X)を表示できるようにしています。
 トランス・プルートー(冥王星以遠の惑星)についても、Stargazerでは仮想的な惑星、小惑星は採用しない方針できました。そこで1992QB1が発見され、その軌道が、ある程度、判明して、冥王星より遠いことから、これが伝説のペルセポネでは無いかと言うことで採用しました。その後、もう少し遠いFWが発見されました。どちらがペルセポネなのか色々と考えるところがありますが、Stargazerの天文暦の小惑星用の枠は7つあるので、別に入れてみました。
 最も遠い感受点として、恒星を使う方法もあります。勿論、この場合も恒星だけではなく惑星との座相を見ながら判断するのですが、恒星の位置も黄経で表さなければならないのが問題です。恒星自身も動いているのですが、恒星までの距離はものすごく遠いので、我々の一生程度の時間では、問題になるほど動かないと言って良いでしょう。それよりも、春分点の移動(歳差)の方が大きく影響します。つまり、恒星自身の動きより、基準軸の動きの方が問題になるのです。
 どれにも属さない仮想的な感受点としてアラビック・パートがあります。ASCや太陽、惑星などの度数を足し引きして出すポイントで多くの種類があります。

    StargazerSで表示する感受点
記号 日本名 英名
 太陽 太陽  サン、ソーラー   Sun
  月  月   ムーン、ルナー   Moon
 水星 水星  マーキュリー    Mercury
 金星 金星  ビーナス      Venus
 火星 火星  マルス       Mars
 木星 木星  ジュピター     Jupiter
 土星 土星  サターン      Saturn
 天王 天王星 ウラヌス      Uranus
 海王 海王星 ネプチェーン    Neptune
 冥王 冥王星 プルートー     Pluto
 ASC 上昇点 アセンダント    Asendant
 MC 南中点 ミッドヘブン    Midheaven
 Vt     バーテックス    Vertex
 Ep     イースト・ポイント East Point
 PoF      パート・オブ・フォーチュン Part of fortune
 Node 昇交点 ノース・ノード   Moon ascending node、North node、Dragon Head
(月節)
 リリス      リリス       Lilith
 セレス      セレス       Ceres
 パラス     パラス       Pallas
 ジュノ     ジュノー      Juno
 ベスタ     ベスタ       Vesta
 キローン     キローン      Chiron
 ペルセ     ペルセポネ
  X           

SGSmS's A. 049 −−−太陽の動き


 占星術で使う感受点の最初にあるのが太陽です。その太陽の動きを良く考えてみましょう。

 黄道と赤道が23度程ずれていると言うことは、我々の生活にどう影響しているのでしょうか。もし、赤道と黄道が一致していたら、どの様な地球環境になるかを先ず考えてみましょう。
 座標の話から導けることですが、真東の地平線上から赤道は立ち登り、真西の地平線上につながっています。どの位の高さまで赤道が高くなるかというと緯度が問題です。熱帯地方では天頂付近まで来ますし、中緯度地帯ではそれなりに高くなり、北極と南極では、地平線と赤道が一致します。最高点がどれだけになるかは90度から緯度の絶対値を引けば出ます。日本人は大体、北緯35度の周辺に住んでいますから90−35=55度の高さまで赤道が上がっているのです。もし、赤道と黄道が一致していたら、太陽は常に真東から登り、真南の方向で地平線から55度の高さで最高点に到達し、真西の地平線で沈むことになります。一年中そうなることになります。地上の各緯度でも一年中同じ状況ができますから、四季の変化が無くなることは確かです。天候の変化が少なくなると言っても、一年中、雨が降ったり、一年中、晴れている場所が出来るとは思えませんが、緯度による気候の変化が更に明確になると思います。
 黄道は赤道に対して約23.4度傾いているわけですから、太陽は赤道から南北23.4度の範囲の中にいるわけです。それも1年で太陽は回っているのですから、南の端から北の端まで行くのに半年かかることになります。
 春分の日、太陽は春分点を通過するのですが、この時、太陽の赤緯は0度です。つまり、秋分の頃は、太陽は真東から上がり、南で55度の高度に達して、真西に沈んでいきます。些末な話になりますが、この日、昼と夜の長さが同じになると良く言われます。これは、太陽の中心で日の出と日の入りを決めていれば、そうなります。しかし、日の出は、太陽の端がちらっと地平線から出たときで、同様に日の入りは、太陽が沈みきって、太陽が見えなくなったときですから、昼と夜を日の出と日の入りで区別すると、春分と秋分の時に昼と夜の長さが同じになるわけではありません。これが、夏至の日となると、太陽の赤緯は最大になります。つまり、赤道よりも北に23.4度のところにいるわけです。そうすると、太陽は真東から北の方向約30度で日の出になり、南では55+23.4=78.4度の高度になり、真西から北よりに沈むわけです。そうすると、昼は14時間半位、夜は9時間半程度になってしまうわけです。
 逆に、冬至の日は、太陽の赤緯は最低になり南側23.4度になります。日の出の時に太陽は真東から南側約30度のところから上がり、一番高く上がる真南では55−23.4=32.6度の高さになります。そして、真西より南側約30度で日没とります。つまり、夏至の時に太陽は高く上がり時間も長く照るし、冬至の時は斜めで短いわけです。
 わたくしが住んでいるのは、日本の北の外れで、北緯43.3度です。ですから、赤道の一番高い高度は90−43.3=46.7度です。夏至の日の太陽は46.7+23.4=70.1度になり、冬至には46.7−23.4=23.3度の高さになります。冬至の時の太陽の高さが20度ちょっとと言うことは、腕を伸ばして、手の指を広げた程度くらいの角度しか上がらないと言うことになります。南にある低い山は、わが家からは23度の高さが無いため陽が当たらなくなることは無いのですが、山に近いところは、冬になったら全く陽の当たらない場所になってしまいます。
 皆さんの住んでいる環境で、日の出から日の入りまでの太陽をずっと追いかけるのは、ほとんど不可能だと思いますが、季節でどう違うのか、あらためて見直すことも、占星術に限らない知的追求の1つだと思います。

SGSmS's A. 050 −−−太陽の動き2

 些末な話の補足になりますが、春分の日の昼と夜の長さについて前回説明しましたが、今一つ、追加しておかなければならないことがありました。と言うのは、地平線近くの天体は大気による屈折現象により0.6度ほど浮き上がってみえるのです。従って、地平線下0.9度弱に太陽の中心があるときに日の出、日の入りになるわけです。赤道直下であれば、太陽は地平線に対して、ほとんど垂直に動きますが、緯度が高くなればなるほど斜めになりますから、昼と夜の時間差は大きくなります。

 さて、太陽の1日の動きや、1年の変化をある程度とらえたところで、太陽と時間の話を補足しておきましょう。
 時を計るの項目では、時の基準として地球を使う話をしました。地球の回転を観測することは、つまり地球以外の星の位置を観測する事になります。但し、星は一般には夜に見えるもので、昼間は太陽が見えるのですから、当然、太陽の位置で時刻を計ろうとするでしょう。
 太陽の位置から昼間を区分して細かい時刻単位に分けることが出来ます。夜は星の動きで分割することが出来ます。昼と夜をそれぞれ12分割するか、丸一日を12分割するかの数の違いはありますが、夜と昼の時刻単位は違う時間間隔になっていました。これを不等時制の時刻と呼びます。
 東洋の12支は、時刻にも配当されています。1日を12の時間帯に分けてそれぞれに配当した方法です。ところで、この12支に配当された時間ですが、現在のように単純に1支あたり2時間で始まったわけではなく、昼を卯の正刻から酉の正刻とする、1刻の時間間隔が昼と夜とで一定でない不定時制が始まりでした。
 時刻を計る機械が数多く作られるようになって、時刻の計り方が一般的になって等時性の時刻が使われる基盤が出来てきました。西欧の流れとしては、不定時制の自然時から定時制の自然時に移行し、更に特定の経度の太陽時を採用した標準時を使うようになってきたのですが、日本では、明治政府による新暦の採用で、自然時の不定時制から一気に世界時関連の定時制に移行したのです。
 西欧では、14世紀の初め頃まで、この1時間が一定でない不定時性の時間を使っていたようです。時を知る必要は、宗教上の必要から修道士に始まったのですが、機械装置の時計が教会等に据えられて時を告げるようになり、定時制の生活が始まりました。
 日本では、それぞれ町々(寺々?)の鐘による報時によっていました。日本でも、かなり高等な計時装置が作られていたのですが、西欧よりも不定時の自然時にこだわった方向へ進み、不定時の自然時での生活が営まれていました。計時装置は夏と冬のそれぞれの季節に対応した目盛りの付いたものが作られました。不定時ですから、一支2時間きっかりではなく、季節によって違う時間間隔になっていたわけです。また1支の真ん中を正刻と言って、これを鐘で知らせました。子の正刻は日の境でもあり、陽の数9を打ったようです。次の牛の正刻は9の2倍の18回なのを省略して8回、その次の寅の正刻は9の3倍で27を省略して7回、卯の正刻には6回と言うようになっています。日の出を明け六つと言うのはこれによります。また、数え間違いをしないように、先に弱く3回、捨鐘を打ってから強く鳴らすと言う配慮をしていたようです。
       打鐘の数
  子 9つ     午 9つ   
  丑 8つ     未 8つ   
  寅 7つ     申 7つ   
  卯 明け6つ   酉 暮れ6つ 
  辰 5つ     戌 5つ   
  巳 4つ     亥 4つ   
 また、1刻を一つから四つに4分割して表現することもありました。丑三つ時と言うのは、丑の刻の4区分の三番目に当たります。現在の時刻表示で言えば、午前2時から2時半の時間帯になるのですが、この言い方は定時制のものですから、実際の運用では差が出るのは間違いないでしょう。何しろ、幽霊の出る丑三つ時は、季節で言えば夏の風物詩で、「夏時間」なのですから。

 このような自然時の時間体制は、不定時制でも定時制でも、緯度経度によって違ってくることになります。ですから、例えば、江戸の正午と京都の正午では、経度差分だけの16分程、東京が早くなります。

 日の出と日没の間の昼と夜をそれぞれ等分して時刻にする方法から、機械装置による計時が始まり、一定の時間間隔の時刻を使うようになってくると、1年を通しての太陽の動きが一定で無いことが明らかになります。太陽の位置は、裏返せば、太陽を巡る地球の位置です。地球の軌道の問題がここで関わってきます。一定の時刻は天の赤道に関係したものですが、太陽は黄道を動いているので、黄道上の動きを一定と考えても、赤道上の動きとして見ると、1年で2サイクルの変化がある事になります。そして、黄道上を動く太陽の動きは、地球軌道が真円でないことから、遅速があり、1年で1周期になっています。太陽による時間(真太陽時)は、以上の2つの運動の変化の合成となっていて、平均的な時間から最大15分ほどの差のある、かなり複雑な変動をしています。ここで、1年を通して変動する太陽の動きを平均化して、赤道上を一定の速度で動く「平均太陽」を想定して、平均太陽時を定めています。経度0度に定めた、グリニッジ天文台の平均太陽時を世界時と呼びます。真太陽時から平均太陽時を引いた時間を均時差と呼びます。この均時差が出る理由が、黄道と赤道の傾斜であり、地球軌道が楕円である為の結果なのです。

SGSmS's A. 051 −−−太陽から月の動きへ


 我々が普通に使っている日付はグレゴリオ暦によるものですが、それ以前は、日本ではいわゆる旧暦を使っていましたし、ヨーロッパではユリウス暦を使っていました。ユリウス暦の改良版がグレゴリオ暦なのですが、そのユリウス暦はナイル暦を参考に作られました。この一連の流れの暦は太陽暦と呼ばれ、太陽位置と暦日は単一の関係になり、季節を暦日で表すことが出来ます。1太陽年は365.2422日と計算されていますが、ナイル暦は365日、ユリウス暦は365.25日として作暦していますから、100年でナイル暦は24.22日、ユリウス暦は-0.78日の違いが出てきます。ナイル暦の暦日と太陽位置の違いは、当時の人の一生の間では10日程度ですから、当時の実用上は充分な範囲に入っていたと考えられます。
 太陽の1日の動き、四季折々の太陽の位置の変化、これらについてお分かりいただけたでしょうか。太陽の次のテーマは、当然、月です。暦の歴史としては月から太陽へと移っていたのですが、過去に遡って考えてみましょう。
 昼間でも見えるほど明るいですし、日毎に位置も形も変えていく月は、暦の基準にするには充分な存在です。これで時刻を計り、暦にするのは極めて自然なことです。しかし、季節を知るという点では、問題が出てきます。月の満ち欠けは、太陽によって照らされている面が、地球との位置関係で違って見える為です。月は地球の「一ヶ月」で、地球を回っています。一ヶ月という呼び方が月の一回りを表しています。一ヶ月の一回りは恒星に基準を取った回転ではなく、地球から見た太陽を基準にしています。これを朔望月と呼びます。各月の1日は新月(朔)になります。朔望月は29.530589日で1太陽年(365.2422日)とは公倍数に小さなものがありません。ここから、月の満ち欠けによる太陰暦と太陽暦をまとめようとする作戦が難しくなってきます。1年を12カ月とすると11日程度が余りになります。3年分で一ヶ月相当になりますから、閏月を作って、調整することになります。太陽太陰暦の壷は閏月の入れ方にあるのです。紀元前四百年頃にメトンの周期が発見され、月と太陽の運動に19年と言う公倍数があることが判りました。現在計算してみると19太陽年と235朔望月の差が2時間程度しかない計算になります。つまり、19年の内、7回閏月を入れれば良いわけです。
 この方法は、月日の誤差がたまってきて、季節が次第に違うようになることは防ぎますが、季節の始まりが何月であるかが直ぐに判らなくなってしまいました。
 月の周期と太陽との比較では、前出のように単純な関係でなく、1年の中で解消できるようなものではありません。太陽太陰暦では、月の相は日付そのものですから良いのですが、1年の長さとの調節を、閏月を置いて行うものがほとんどです。そうしても季節と月日の値は前後してしまうので、東洋では、註として24節気を設けて、暦に註として入れて使う方法が普通になりました。1年の初めも、この24節気によっていて、月の一日になっていませんでした。前漢頃の中国では1年の初めは冬至でしたが、後代に立春と変わったようです。
 暦としては、太陰暦が最も早く作られたと想像されていますが、季節に重点を置けば、太陽暦へ移るのが自然と言えるでしょう。バビロニアの暦は太陽太陰暦ですが、置閏法が確定されていないために、地方地方で違う方式が採用されていたようです。強大な帝国を築いたエジプトでは紀元前四千年前に太陽暦を採用しました。それがナイル年なのです。
 月は地球を巡る衛星で、太陽よりも複雑な見かけと動きをします。月の動きが太陽に比べて複雑なのは、月の公転面(白道面)と地球の公転面(黄道面)が5度ほど傾いているためで、我々から見ると一定の赤道から、黄道の変化に加えて白道の変化も入るからです。緯度35度の場所で太陽の最大高度は78.4度から32.6度の範囲にありますが、月は更に5度づつ、83.4度から27.6度の範囲になります。

 月の満ち欠けは月齢で表します。月齢は任意の時間における新月の瞬間からの時間を日数で表したものです。暦に書いてあるものは当日の昼12時の値であることが多いようです。太陽−月−地球と並んだときが新月です。ここから1週間ほどで太陽から西に90度の位置に月がやってきます。それが半月、上弦になります。更に1週間ほどで太陽から180度の位置に月がやってきます。これが満月。また、更に1週間ほどで太陽から東に90度の位置に月がやってきます。半月、下弦の月です。
 新月、上弦、満月、下弦を太陽と月のアスペクトで言えば、コンジャンクション(合)、スクエア、オポジション(衝)、スクエアとなります。占星術上、重要なエポックになります。また、月が黄道に近い場所で新月、満月になると日食や月食になります。ノードは黄道と白道の交点ですから、つまり、日食や月食の時は太陽、月の近くに昇交点、降交点があります。具体的に言えば、日食の時は、13度以内に必ずノード又はサウスノードがあります。
 ところで、月の影が地球に降りるとそこで日食になるのですが、月の影は約37万5千5百キロメートルの長さがあります。これは太陽から完全に隠れた部分のことです。地球と月の距離は平均が38万4千4百キロメートルですが、概略36万から41万キロメートルまで変化しますので、時によっては月の影が地球に届かないことが出てきます。つまり月が太陽を隠しきれなくて、金環食になる場合は月が遠いのが原因になるのです。しかし、ターゲットを地球であると考えると、月の位置は地球の大きさの範囲、つまり直径1万2千キロメートルの範囲にあれば日食になるわけです。
 これに対して月食の方は、地球の影が月の位置で、直径9千3百キロメートルになり、皆既月食は日食よりも可能性が、やや低くなります。勿論、日食が見えるのは地上の非常に限定された地域ですし、月食は、地球の夜側なら見えることになりますから、1カ所で見える日食と月食の可能性は全く違うことになります。
 この日食や月食は、普通の合座相よりも大きな意味があり、重要なエポックになることは、既にお話ししています。ところで、ここに現代占星学の解答を待つ課題の一つが出てきます。月食は地上の夜側から見えますが、日食が見られるのは、極めて限定された地域になるのです。これは、月が地球に極めて近い天体であるための現象です。月の位置は、古い占星術では、現地の見かけの位置を使っていました。今は地心位置を使っていますが、地上の各地点からの月の位置は、それぞれ違って見えるのです。これは視差の1つなのですが、地心位置から約1度の範囲で変わってきます。月が天頂にある地点では、違いはありませんが、月が地平線に近づけば近づくほど違ってきます。
 日食は、目で見る限りでは「地域現象」なのです。占星術上、日食が地域現象なのか、範地球的現象なのかは、未だに研究途上の問題といえます。SGSmSでは、「マップ」を作れるようになっています。理科年表では赤経の合の時間が載っていますから、その時のマップを作ってみれば、太陽と月がどの地方で日食となるのかが、直ぐ判ります。その時の事件を調べて、まとめれば立派な研究報告になるでしょう。

SGSmS's A. 052 −−−惑星の動き

 毎日の天球の回転、つまり日周運動を考えにいれなければ、太陽系の仲間たちは、全体として、西から東に向かって動いているように見えます。つまり、位置の基準を背景の恒星に取ってみた場合の話です。太陽と月は、その速度の多少の遅速はありますが、ほぼ一定の動きで、周回しています。太陽の運動、つまり地球の公転はかなり高い規則性を持っています。月の運動も太陽ほど単純ではないですが、規則性があります。太陽と月の関係も、多少複雑ではありますが、規則性があり、サロスの周期を始めとして、古来より、それらの周期的関係が発見されています。
 ところで、惑星と呼ばれる星は、その名前の由来通り、複雑な動きをします。西から東への動き(順行)と、東から西へ動く動き(逆行)を繰り返し全体的に西から東へ動いて行きます。しかし、これでは惑星の動きを表現しただけで、理解したことにはなりません。なぜ逆行するのかというと、見掛け上地球の公転運動が惑星の公転運動を追い越す(外惑星)、又はその逆(内惑星)が起こるためです。従って、逆行の動きが最大の時は、内惑星では内合、外惑星では衝になります。

 水星:内惑星ですから、太陽にくっ付いて見掛け上、平均1年で天球を1周します。太陽から23度位しか離れません。会合周期は約116日ですから、この周期で順行逆行を繰り返します。水星の軌道は離心率が0.2056と言う事ですから、太陽からの平均距離5800万キロメートルを中心に2400万キロメートルも近づいたり遠ざかったりします。この為、実際の会合間隔は平均からかなり違った時になります。平均的な話ですが、順行の時の見掛けの最大の速度は1日に1.8度、逆行の最大は0.95度程度になります。

 金星:水星と同様、内惑星ですから太陽のそばにあるのですが、太陽から最大46度ほど離れる事があります。地球よりもきれいな円軌道で、軌道上の速度は地球よりも一定です。会合周期は584日で、その内3十数日程度逆行します。順行の時の見掛けの最大の速度は1日に1.25度、逆行の最大は0.65度程度になります。

 火星:地球のすぐ外側の外惑星です。この為、地球との距離が大きく変化します。また、軌道の離心率も比較的多めで、地球に最も接近した時や遠ざかった時の距離も、その時によりかなり変化します。会合周期は約780日で、この内、2カ月半ほど逆行しています。順行時の最大速度は1日で0.7度、逆行では0.4度程度です。

 木星:地球から離れるにしたがって、太陽を巡る動きも遅くなり、順行と逆行の期間が同じようになってきます。会合周期399日の内、4カ月ほど逆行します。順行時の最大速度は10日で2.3度、逆行では1.3度程度です。

 土星:会合周期378日の内、5カ月弱ほど逆行します。順行時の最大速度は10日で1.2度、逆行では0.8度程度です。

 天王星:会合周期370日の内、5カ月ほど逆行します。順行時の最大速度は10日で0.6度、逆行では0.4度程度です。

 海王星:
 冥王星:冥王星の軌道は水星よりもつぶれた楕円になっていて、現在近日点近くを通過しているため、両星の現在の太陽からの距離は似たようなものになっています。この為、どちらも会合周期約367日の内、5カ月強ほど逆行します。順行時の最大速度は10日で0.4度、逆行では0.3度程度です。

 上記の数字は理科年表等に掲載された平均的な軌道速度、距離のデータから計算したものです。

 逆行の無い太陽や月で、平均速度より遅い場合を逆行扱いする方法もありますが、一般向きとは言い兼ねます。

 SGSmSでは順行逆行の判断を直前の位置と比較して判断していますが、留の正確な瞬間を導くには天体位置の格納精度が足りません。例えば、ホロスコープの天文暦を使って留の瞬間を知ろうとしても、余り良い精度で出ません。実用上は留の瞬間を使うと言うことはありませんので、目的外使用と言う事になります。Stargazerは占星術用ソフトウェアですので、航海暦や天測用として使うことは(使う人が居るとは思いませんが)想定していません。精度が足りないと言うのは、わたくしにとっては面白くないことなのですが、これを解決するためには、現行の天文暦ファイルを5倍から10倍の大きさにしなければならないので、実用上困らないと言う点を盾にそのままにしてあります。

 留については、その時刻の意義より、同じ度数に長く滞在するという点に注目して下さい。もし、その度数が、問題となるチャートであれば「事件有り」と言うわけです。

 また、感受点の動きを中心に見たければ、公開寸前のHS.EXEハーフサムをお待ち下さい。統合され使いやすくなった経過図が入っています。

SGSmS's A. 053 −−−惑星の動き2

 前回は順行逆行での動きの速さを述べましたが、どの程度、進み、戻るかもある程度つかんでおきましょう。惑星の動きが、何もかも平均通りにあるのなら、何も難しい計算をする必要はありません。また、どれだけ平均から違うかと言うことも簡単ではありません。しかし、ある程度と言うところがありますから、それらを押さえておいて損はありません。
 以下に順行、逆行それぞれでどれだけ動くかをまとめてみました。
  順行                 逆行
 水星:120から140度位     水星:15度位、20から28日
金星:590度位(1周と230度)  金星:16度位、45日程度
火星:420度位(1周と60度)   火星:15から20度位、75日程度
木星:43度位            木星:10度位
土星:20度位            土星:6から7度位
天王星:4.3度位          天王星:4度位
海王星&冥王星:5度位        海王星&冥王星:3度位

 惑星の軌道が円から外れるほど、違いも多くなっています。水星、火星は離心率が大きめで、平均から可成り外れますし、金星の動きは大体一定しています。
 前回の惑星の動きと、この表からわかることは、つまり、例えば金星が順行から留になってから16度から17度を45日ほどをかけて戻り、再び順行になります。順行になってから540日で天球を一回りと230度ほどで逆行するために留になります。
 経過天体のあるポイントへの接触と言うことで考えると、太陽、月は逆行しませんから、一回接触してからまた戻ってくるまで一周分の時間がかかります。しかし水星以降の惑星は逆行がありますので、時として、行き戻り行くで3度も通過する場合があります。また、留の場所に当たれば、通常の通過よりもはるかに長い接触となります。
 海王星と冥王星は遠いのですが、その分動きが遅く順行逆行の動きが重なっている部分が出てきて、5回も接触する場合があります。

 天文暦をたどってみたり、ハーフサムの経過図で火星の動きを追ってみると、火星が1つの星座宮に大変長く居る場合があります。例えば、火星は1992年9月中旬から1993年4月までの7カ月半蟹座宮にいます。

 このように、チャートの上に現れた天体を見るだけでなく、どの様な動きをして行くかを押さえておくと、良い判断につながることでしょう。勿論、歩く天文暦、しゃべる天文暦と呼ばれるように、天体位置を憶えてしまえる人は幸いですが、特殊な例ですから、現象の微分的な面から攻めてみましょう。