SGS's Astro ソーラ・レボリューション

ソーラ・レボリューション、ソーラ・リターン、太陽回帰

 太陽は1年で黄道を一周していますから、生まれた時から1年で再び生まれた時の位置へ戻ってきます。1年は365日の時と366日の時がありますから、毎年、同じ日の同じ時間に戻ってくる訳ではありませんが、毎年、誕生日の頃に戻ってくるわけです。その戻ってきた瞬間の天宮の状態で、それからの1年の運を見るという方法です。旧SGでは天体位置の精度が、読み出しの段階で0.02度の誤差が出る可能性がありました。SGLではプログラム的な対処で0.005度となり、回帰計算の最大誤差は0.01度となっていました。ここで0.01度の誤差があると、0.01×24×60=14時間で14分の違いになります。ソーラリターン図の誤差が14分も出たら、実用上支障が出てきます。特に太陽回帰図のASCは重要ですから、更に正確な計算が必要です。この為に、SGSでは太陽位置に倍精度数値を使用して必要にして充分な精度を確保しています。その太陽回帰を使ってみましょう。

先ず、出生データの登録です。
 1901年4月29日22時10分(JST)東京 昭和天皇

 太陽回帰を見るときは、1重円で独立してみることも3重円のNPTとして見ることも、それぞれ意味があります。ここでは、3重円NPTの一環としてみてみましょう。ですから、回帰図をいきなり出すのではなく、出生図をよく見ます。この段階で「出生図の解読」を行うのは妥当なステップですが、そこは別の機会に譲るとして、とにかく、天体位置を暗記しましょう。チャートの天体位置を憶えるというのは何がなんでも必要なことです。SGを使うと苦労無く天体位置が出てきてしまいますから、意識してチャートの天体位置を頭に入れる必要があります。3重円では出生円が表示されますから、見落としが少なくなるでしょう。また、充分に慣れない内は、表示天体も10天体+ASC+MC+ノードの13感受点でやる方がよろしいでしょう。
 出生の感受点位置は
太陽 牡牛 8.51
月  乙女22.66
水星 牡羊22.41
金星 牡牛 8.11
火星 獅子26.51
木星 山羊13.05
土星 山羊16.38
天王星射手16.29
海王星双子27.18
冥王星双子16.29
ASC射手26.21
MC 天秤15.20
ノード蠍 22.63

 次に、いよいよ、回帰図の作成です。H1、H4、HORO1、HORO3NPT何れでも出来ますがHORO3NPTで見ましょう。HORO3NPTは一発で回帰図を出せませんから、出生データを選択した後は、リターン・キーの連続打ちで、とにかく、チャートを出してからESCメニューにある回帰図でそれぞれの年の回帰図を出します。誕生してから崩御するまで87枚の回帰図が出来るのですが、ここは根気で出してもよろしいでしょう。勿論、この方に興味のない方は、ご自分の回帰図を必要と思われる分だけ出してみましょう。次回は出してみたものをどうするかと言うお話です。

 回帰図を見る際の原則は次のようなものです。
 座相:特別な座相(クランドクロス、グランドトライン、T字スクエア、YOD)を先ず見る。特別な例はそれほど多くないので、普通は合を中心に見ることになる。経過の天体のアスペクトと言えば合のことと思って間違いはない。合以外は補助的に見ることになる。許容度(オーブ)は1度、甘く見つもっても1.5度しか見ない。
 感受点:ASCが他の感受点に比べて重要。(制限条項あり)
 大量の回帰図を前にして戸惑う方が多いでしょう。回帰図の色々な読み方がありますが、その人の重要なエポックとなる時を判断してみましょう。回帰図で重要なのはASCです。しかしこのASCは出生時間が正確であるか、占星術の方法により修正されたもの、何れにしても正確な出生時間である必要があります。これが制限条項です。回帰図で使用する許容度は非常に狭いことに注意して下さい。ASCは4分で平均1度動きますから、出生時間の精度が必要ですし、当然出生地も都市程度には絞って置く事が必要です。

 手元にある歴史年表には

立太子 1916/11/ 3
摂政  1921/11/25
結婚  1924/ 1/26
即位大礼1928/11/10
継宮誕生1933/12/23

 こんなものでしょうか。天皇の個人的な問題についてはそう詳しいはずがありません。しかし、皇室に詳しい人は結構いらっしゃいますから、その方に聞くと、面白いはなしをしていただけるかもしれません。ご自分で予想を立てる事が出来るようになるために、過去の例を自分の手で検証してみましょう。ある事件があった時の回帰図を見て、その事件を感受点やその位置で表現できるようにするのは良い練習です。
 さて、次々と昭和天皇の回帰図を見ていくと回帰図のASCが出生(n)や進行(p)の感受点と「接触」(つまり、合)するのは限られたものしかないことに気付くはずです。本当は「特別な座相」を拾うのですが、ASCに合となる感受点があるのを選び出してみましょう。10天体とASC、MC、ノードでチェックしました。

1920獅子26.84 火n
1923牡牛29.23 太p
1926山羊16.24 土n土p
1940蟹  9.97 水p
1941乙女22.68 月n
1944蟹  1.06 金p
1960牡牛 7.37 金n
1967射手21.49 Mp
1977双子26.01 海n
1979蠍 20.47 ノードp
1981双子17.51 冥n冥p
1988山羊15.65 土n

これは単に回帰図のASCがn及びpの天体と合である場合を抽出しただけですが、これからだけでも、色々と言えることがあります。例えば、第1室に山羊座の土星を持って生まれていますが、一生の間に太陽回帰のASCがやってくるのは2度しかありませんでした。これには生まれてから100年分を全部見てみました。1926年と1988年の回帰図だけです。ご存じのように昭和天皇は1989年の1月に亡くなられていますから、この時の回帰図は1988年の回帰図です。1926年は、これも皆様ご存じの昭和改元、12/25ですから1926年の回帰図です。昭和天皇のチャートを回帰図とのかねあわせで見て行くと、各所、各時期に土星が現れます。例えば結婚の回帰図は1923年ですが、出してみて下さい。経過の土星が出生のMCにのっかっていると言う状態です。失礼ながら庶民の結婚の回帰図で良く見られる「しあわせっ」と言う感じがしません。さて話を回帰図に戻して、次回は、更に回帰図の応用(?)に進みましょう。


 ソーラ・レボリューションの応用ですが、ソーラ・レボリューションが「特別な感受点位置」としてチャートに影響するという観点からすれば、回帰感受点の位置を他のチャートに使用しても、何らかの意味が生じると見るのは決して不自然ではありません。遠回しな言い方ですが、自分の回帰図を他の人の出生や進行と重ねてみるのです。特定の事件で関係した人の出生とソーラ・レボリューションの相互関係を見るためにH4で4つを同時に見てみましょう。H4は旧2重円の拡張版という押さえで全て独立のチャートとして設定、選択出来ますから、色々と使えるはずです。出生図の比較で行う相性(コンパリズン)だけでは、実際の場合に判断を失敗することが多いはずです。進行、経過を勘案し時期的な問題も含めて総合的に「相性」を判断しなければならないのですが、その総合的な判断の一助としてこの方法が使えます。残念ながら、昭和天皇を使った例は用意していませんが、わたくしの身近な人々や、わたくしと関わった人に関しては、このソーラ・レボリューションの方法は実に見事な「定型」を見せることが多いです。勿論、わたくし自身に関しても「ヘェー」という奴が目白押しにあります。単にわたくしとこの方法が相性が良いだけかもしれないと言う一抹の危惧がありますが、どうか皆さんも、経過の天体の接触を逐一追いかけるだけでなく、このソーラ・レボリューションの技法を使ってみて下さい。SGからSGSに変更された理由の最大の1つがソーラ・レボリューションの為なのです。
 注 H4:StargazerSにあったホロスコープ4重円のこと。Stargazer for Windows by Delphiでは「5重円ホロスコープ」と多重円の「チャーツ」に発展しています。


 せっかく昭和天皇の出生を入力したのですから、もっと良く見てみましょう。前々回に「ある事件があった時の回帰図を見る」という事をおすすめしましたが、昭和天皇の場合、わたくしが少し見た限りでは土星がよく絡んでいることが多かったのですが、これは、「土星が事件に絡む」という法則か、「《土星》の事件をピックアップした」とも考えられます。両方とも言えるような気がしているのですが、このような解釈をしてみましょう。例えば、天皇の結婚と言う事件は、庶民と違って本人一族の問題だけでなく「国家」の事件です。国家としての天皇の結婚の目的は「世継ぎ」にあるのですから、結婚と長男の出生とは一連の関わりのある事件であり、ひいては天皇の在位期間そのものにも関わる問題です。この3つの事件、結婚、継宮誕生、退位(死去も含む)のソーラ・レボリューションの土星に注目すると、
 結婚  1923年の回帰 MCn(10室)に合
 継宮誕生1933年の回帰 リターン図の5室のカスプに合
 退位  1988年の回帰 リターン図のASCに合
 最初に目についた事を上げましたが、それぞれ占星術の部品としての意味付けからすると、其処にあって当然の状態ではないでしょうか。また、山羊座に土星を持って生まれた昭和天皇は、土星の示す生き方を忠実に守っていたとも言えましょう。


 ソーラ・レボリューションのASCが重要であると言いましたが、他の感受点と合になる話だけを上げてきました。つまりアスペクトだけを問題にしてきたのですが、要素としてサインと言うものもあります。次々とソーラ・レボリューション図を出していて、チャートのASCがある程度、規則的に移動して行くことに気が付いた方がいらっしゃると思います。つまりソーラ・レボリューションのハウスは正確な周期ではありませんが約90度弱位で廻っていくのです。4年後のサインが同じになることが数回繰り返しそれからずれて行きます。ソーラ・レボリューションのASCはその回帰年に強調されるチャートの特徴、性格を代表しています。したがって、ソーラ・レボリューションのASCのサインで行動の特徴、気分を類推、予想することが出来ます。また出生図と同じようにASCのサインの守護星、ルーラーの状態も重要です。例えば、ASCが牡羊であれば、牡羊の意味合いとされている点が強調され、元々非行動的な人物でも何かと考えるよりも行動が主になると言われています。ソーラ・レボリューションを有効に使うためには、出生図を読めなければ出来ないと言う言い方もありますが、何もかもはじめから出来るわけではありませんので、出生図を読む努力と共に、ソーラ・レボリューションもやってみることが大事です。


 ソーラ・レボリューションの技法についての若干の補足をしておきます。

 ソーラ・レボリューションはもう1枚のチャートを作成するのですが、チャートを作るには場所が必要です。何も考えなければ出生地ですが、ある1年の運を見るのですから、移動した先で作成するのがスジといえます。1つの都市の中で移動しただけなら、大きな違いはないのですが、わたくしのように東京で生まれ北海道に住むと言う場合は、経度はそれほど違いませんが、緯度が違います。MCは同じでもASCが違ってきます。また、わたくしの妻は関西生まれですから、緯度経度共に違いますのでハウスシステム全体が影響します。狭い日本の中でこれですから、イギリス生まれでアメリカ在住と言うような人は出生地で作る場合と移動先のものではハウスが決定的に違ってきます。基本的には、その誕生日に住んでいる場所で作るのが原則です。たまたま旅行中等で自宅にいなかったとしても、自宅での位置で作ります。
 この「場所によってハウスが変わる」ことを逆手にとって、例えば木星をASCに持ってくると言うような事も出来るわけです。また、これほどに度数の精度を要求されることから出生時間の精密な修正が可能になります。

 もう一点、春分点の取り扱いです。
 春分点として幾何学的位置と視位置、平均位置と真位置のそれぞれ2つを選ぶことで、4つの組み合わせが選択できます。しかし、現行のホロスコープ表示プログラムによるチャート右側の位置一覧からは、その違いが判ることはほとんど無いでしょう。しかし、ソーラ・レボリューションの計算では、それが問題になることがあります。出生の位置へ戻ってくるタイミングの問題ですから、その「時」によって真位置と平均位置での違いが出ますし、幾何位置と視位置では、実際の位置が違うにも関わらず、回帰図のハウスシステムにはほとんど違いが出ません。例えば昭和天皇の1910年のソーラ・レボリューションのASCは
 真視 魚18.56
 平視 〃13.98
 真幾 〃18.56
 平幾 〃13.97
 と言うように計算されます。今までの例は真位置での話です。幾何学的位置と視位置の差は一定ですが、平均位置と真位置の差は不定に近いですから、研究の余地が残されています。これに関しては、皆様のご自分による実験と解析で結論を出していただきたいと思います。


 SGSには太陽絡みの経過の特別な「時」を計算するために、進行の太陽を使えるようになっています。進行の太陽と経過の太陽が正確に同じところに来る時を持って、チャートを作成します。判断の方法は、通常のソーラ・レボリューションと同じです。

 天体の働きを考えることなく、進行経過時期表を使って、アスペクトの時期を出し、この時に何が起こるかを不安の内に過ごすというのは、決して無駄と言うわけではありませんが、占星術の方法からしても賢いやり方ではありません。経過の土星の接触は強力な判断材料ですが、実際の正確な合の時にピッタリで事件が起こると言うことは期待できないことが多いようです。また、逆に木星の接触で常に良いことがあるとは限りません。
 ここで、その特定の星を過去にどう使用してきたかと言う点が問われてきます。一般用語に直すと、その人物がどのように生活を心がけ生きてきたかと言うことを知らなければならないのです。また、連綿と続く星の配置の変化から、出来る限り、それを見破ることも必要です。ソーラ・レボリューションやプログレッシブド・ソーラ・レボリューションが、何故、元のチャートの解析に重要な意味を持つのかということについて、色々、説明紛いのことをくっつけても結局は何か判ったような気になるだけで、その実、何も判っていない状態であることに変わりはありません。とにかく「使える手」であると言うことを知っていれば必要にして十分でしょう。
 経過の感受点は、連続的に動いていますから、出生図と特別な関係になることは別に珍しいことではありません。その中でも、経過の「特別な時」の感受点が出生図に重要な意味を持つというのが占星術の原則です。あるチャートの特別な時と経過独自の特別な時が重なるときがあります。この時は重要度が跳ね上がります。新月や満月、月食、日食等と回帰が重なる場合ですが、効果は甚大で、その後に決定的な影響を与えることも多いようです。